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初恋の彼女と付き合うまでのお話

夏:私、ほんとに天に恋しちゃってるのかな…




彼女と友達になったのが去年の4月中旬。

私と違う明るい彼女に、憧れを抱き始めたのが去年の9月中旬。

彼女に会いたい。という思いが強くなり、自分の感情に疑いを持ち始めた去年の12月終わり。

そして、これが恋だと気づいたのは


2年生になり太陽がうるさい6月の頃だった。



今日は私が日直当番。

だから1人、教室に残って先生に頼まれた仕事を着々と進めている。

仕事は日誌の他に、

3つの違うプリントを3枚1組にして、それをクラスの人数分作らないといけない。

もう1人いるはずだけど…サボったみたい。

夏:私一人にやらせるって…頭いってるでしょ…


天:あれ?夏鈴なにやってんの?

夏:あ、天。今日は日直で、

天:え、一人で?

夏:クラスの誰かさんはサボったみたいだから。

天:へぇ〜…夏鈴珍しく怒ですか?笑

夏:うるさい。で、なんの用?

天:怒じゃん…笑  暇だからぶらぶらしてた〜。

あぁ、そうですか…

なんなの…もう絶対怒鳴りつけてやる…

怒る勇気もないけどさ…


天:半分もらうね

夏:え?いいよ。日直じゃないんだから。

天:んーん。これは私の自己満だから!


相変わらず彼女は優しい。

そして、ずるい。

私の心を、どんどん、虜にしていく。


天:ん〜っと…うんうん、なるほどぉ…

夏:ちょっと静かに、

天:これどうやってやるのっ?



夏:やっぱ私がやる。

天:え、だめ!一緒にやろ?ねっ?

夏: …はぁ。これは、


仕事のやり方を教えて

一緒に、会話をしながら進めた。

関係ない勉強の話とか…恋バナ…とか。


やっぱ楽しくて、気づいたら仕事は終わってた。

もっと…あって欲しかったな。と思うほどだった。



帰り道も一緒に歩いた。

綺麗な雲を見てはしゃぐ姿が可愛くて

自然と心の底から、笑っていた。


天:じゃあ私あっちだから。

夏:うん。またね。

天:明日も一緒に帰ろうね!

軽く笑って、手を振った。


私に背中を向けて歩く天を見て

無性に心が痛くて、寂しかった。

まだ話してたい。

一緒に歩きたい。

一緒に、笑いたい。


天と、もっと一緒に、いたい。



その時気づいた。

私は天に恋をしてるんだ、って。

ちょっと泣きそうになった。

でも我慢した。

だって、天が振り返って


私を、私の目を、見たから。



天:夏鈴〜!帰ったら電話かけてもいい〜!!



私の心なんか知らずに

周りの目なんか気にせずに

私に向けて叫ぶ姿が、なんか嬉しかった。


夏:うん、いいよーーっ!!


声の限り叫ぶと、天は笑って大きく手を振ってまた家に向かって歩き始めた。

夕方なのに、強い太陽がうるさかった。

でも、そんなの今は小さなものだった。

だって…



" 私の心の方が、何倍も…うるさいんだもん…。"



ちょっと涙が出た。

でも、それすら恋の結晶だと思うと

とても、愛おしく感じた。



そして付き合ったのは今日から2ヶ月後の

夏休みのとある日のことになる。


 
天:ねぇ夏鈴…ここわかんない…


夏休み。

私はインドア派だから外には出ない。

今日は私の部屋で天と一緒に勉強中。


夏:ここは…え、なにこれ…

天:夏鈴もわかんないの〜

夏:私そんな頭良くないし。

天:だからって怒んないでよ〜

夏:怒ってないし…


よりによって2人とも勉強は得意じゃない。

天よりはできるけど。

天は疲れたのかシャーペンを置いて、ごろーんっと横になった。


夏:そろそろ休憩する?

天:する。しばらく休憩

夏:そっ。アイスでも食べる?

天:食べる!早くっ、早くっ!


いきなりテンションが戻ったのが愛おしくて思わず笑ってしまう。

私は部屋を出て冷凍庫からカップアイスを2個持っていった。

天は、チョコと抹茶どっちが好きなのかな…



天:ん〜、冷たいのが染みるっ!


結局天はチョコの方を食べている。

美味しそうに食べる姿もかわいい。


天:抹茶って美味しい?

夏:私は好きだよ。

天:へぇー、食べてもいい?

夏:えっ、天のスプーンで、


天は私のスプーンを奪って抹茶のアイスを1口食べた。

これって…


夏:間接キス…だよね…?

天:んー…やっぱ私はチョコの方が好きかな〜

夏:えっ、それより、あの、

天:なに慌ててるの。笑

夏:だって…間接キス…

天:あ〜、女の子同士なら普通じゃない?


女の子同士なら普通。

それもそう…だよね。

私が勝手に慌てて、バカみたい…


天:あとはカップルとかでも普通だよね

夏:あぁ…まぁそれはね…

天:ずっと思ってたんだけど、


天はアイスをスプーンですくって、少しの間それを見つめていた。

珍しくなにか考えてるような、探っているような。



天:夏鈴、私に恋してるでしょ?



単刀直入に言われた。

すっごく目を見開いてしまう。

バレてる事を知らなかったから。


天:ふふっ、合ってるんだ。笑

夏:えっと…あの…ごめんなさい…

天:なんで謝るの?

夏:だって…天は友達のつもりだったのに、私は勝手に恋してて、なんかそれって裏切ってるというか…

天:やっぱアイスは溶け始めが美味しいよね〜


また話を聞いてない。

今、結構大事なところなのに。

ちょっと怒りそうになったけど、でもそれより天が引いてないことに少し安心した。


天:なーんだ、両思いだったんだね。

夏: …えっ?

天:ん?だから、私も夏鈴の事好きー!ってこと。

夏: ………えぇっっ!?

天:え、気づいてなかったの!?

夏: …うん。知らなかった…


予想外のことに何回も瞬きをしてしまう。

天は優しく笑っている。

抹茶味のアイスは溶け始めていた。


天:夏鈴、私と付き合う?

夏: …天がいいのなら…お願いします…。

天:ふふっ、じゃあこれからはカップルね?笑

夏:実感湧かない…

天:んー、じゃあ!


天はなにかを思いついたみたい、

と思ってるとキスをされた。

初めての、1秒間の優しいキスだった。


天:どう?実感湧いた?

夏: …恥ずかしさしかない…//

天:それが恋だよ。笑

夏:恥ずかしっ…//

天:じゃあ勉強再開しよーっと!

夏:集中できるかな…

天:初めてのデートは勉強会だね?笑

夏:っ…意識しちゃうからやめてっ…!///


初めてのキスは、抹茶味のアイスみたいなほろ苦さはなくて

ただ、とても甘かった。



この日から私と天は付き合い始めた。

そして、今は学校の放課後。

教室で軽く勉強していて、隣には、


天:ねぇもう勉強やだ!

夏:わがまま言わない。

天:だってぇ〜…

夏:勉強終わったら帰りどこか寄ってもいいよ?

天:え、やる。行く。頑張る。


ちょろい。

こんな素直なとこも好きで、もう天との関係には慣れた。

そしてやっぱり私は心から天に恋をしている。

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