中国の断末魔と習近平の選択

■中国の成長を食い潰した習近平
 アメリカは20世紀末に、世界にグローバル・スタンダードを押し付けた。中国は安い人件費を武器に急成長。同じ商品ならば安さを求めるので、中国経済は急成長した。世界から中国に工場が置かれ、中国は世界の工場と呼ばれるまで急成長。

 21世紀になっても中国経済の成長は止まらず、潤沢な資金を元に軍拡路線に邁進。さらに外国に親中国派を増加させ、外交でも存在感を強める。中国に居ながら各国の政財界に影響力を持つようになり、2013年からは一帯一路構想が開始された。

 だが急成長は国内外に問題を生み出していた。国外では急拡大する中国の覇権に警戒感を持つ国が増加し、アメリカ・イギリスを中心とした反中国派連合が誕生。国内では2021年になり、中国の大企業のデフォルト危機が明らかになった。

中国恒大など不動産大手、数十億ドル規模の簿外債務=JPモルガン
https://jp.reuters.com/article/china-evergrande-debt-hiddendebt-jpmorga-idJPKBN2GX2EX

 中国の大手企業のデフォルト危機は以前から存在しており、今まで誤魔化していたことが発覚。だがデフォルト危機が強くなればなるほど、人民解放軍による台湾への軍事的圧力が高まっている。

■誤魔化せなくなった中国経済
 20世紀末から中国経済が急成長したのは事実。グローバル・スタンダードの本性はアメリカン・スタンダード。アメリカの基準をグローバル・スタンダードに置き換えた世界。本来はアメリカが利益を得るためだったが、皮肉なことに世界がアメリカから利益を奪うことになった。

 この事例は古代ローマ帝国の時代で確認されている。ローマ帝国は征服した属州に、ローマの優れた文明と技術を提供した。文明・技術で遅れた属州は、先進的なローマ帝国を受け入れた。

 だが属州は、受け入れるだけで終わらなかった。ローマの技術を習得すると、逆にローマへ商品を輸出するまで成長した。このため、属州がローマから富を奪うことになった。これと同じ現象が、現代で再現されている。

 中国はアメリカを仮想敵国と見なしていたが、軍事力で劣るので相手にされない。アメリカは中国人の多さから、有望な市場と勘違い。人間の数が多いなら有望な市場になる条件を持つが、敵意を持つなら未来の敵になる。

 だがアメリカは、中国にグローバル・スタンダードを押し付けた。グローバル・スタンダードを押し付けられた国の多くが不平から反発した。だが直ぐに利益が得られるので沈黙。中国はグローバル・スタンダードから利益を得た典型的な国。

 中国経済は急成長したが、中身は社会システムが急成長に追いつけないほど乖離していた。それでも中国は成長と富を追求。中国の急激な成長の裏で負の遺産となり、今の富だけを見ていた。その結果、ルールを守っているように誤魔化し、複数の大手が経営危機に陥っている。これを放置したことで、中国全体を破壊する経営破綻になりそうだ。

■台湾への軍事的圧力が増大
 中国企業のデフォルトが囁かれるようになると、南シナ海における人民解放軍の活動が縮小。アメリカ海軍・イギリス海軍か合同訓練や軍事演習を実行しても、人民解放軍を用いた返礼が無くなった。本来ならば、仮想敵国の軍事演習には軍事演習で返礼するのが基本。何故なら、軍事演習は制海権・制空権の争奪戦であり、覇権の存在を国内外に示す。

 基地から戦場まで継続的に往復することで、制海権・制空権を獲得する。敗北すれば失うから、平時の覇権は軍事演習で争奪する。平時でさえ基地から往復できないことは、仮想敵国を恐れて引いたか、資金枯渇で動けないかのどちらか。

 南シナ海の活動が縮小すると同時に、台湾への軍事的圧力が増加。これは偶然ではない。習近平が以前から中国企業のデフォルトと、中国経済の破綻を知っていれば?南シナ海の活動を縮小し、台湾への軍事的圧力に資金を回すことは有り得る。

 何故台湾を優先する?台湾は人民解放軍が南シナ海・太平洋に進出するには、必ず占領しなければならない。戦時に台湾軍が制海権・制空権を獲得すると、人民解放軍海軍は南シナ海への進出が断たれる。さらに日本と連携すれば、太平洋への進出を遮断できる。それだけ台湾は重要な位置に存在する。

 これは表向きの地政学・戦略から見た台湾の価値だが、裏では中国の易姓革命が心配なのだ。中国企業のデフォルトが中国経済を破壊すれば?国民は暴動を起こすだろう。それは中国共産党への怒りに変わり、易姓革命に発展するだろう。

 南シナ海における人民解放軍の活動を縮小し資金を節約。代わりに台湾付近に人民解放軍を集中。連日台湾への軍事的圧力を見せることで、国民に対して威嚇。仮に反乱を起こせば、人民解放軍が制圧することを認識させるためだ。

 人民解放軍は国家の軍隊ではなく、中国共産党の私兵。だから外国軍との戦争目的ではなく、国民の反乱対策が目的。実際に人民解放軍の基地ネットワークは、外国の軍隊の地方分権方式ではなく中央集権方式。

 人民解放軍の製造・大規模整備可能な基地は、北京付近に集中している。だが地方の省には、軽整備・補給はできても大規模整備はできない。これは中国共産党が、地方の反乱を恐れている証。仮に地方の省に有力な基地を置けば、反乱軍の戦力になる。だから中国共産党は、中央から地方に人民解放軍を展開させる方式にしている。

 習近平は中国企業のデフォルトで発生する状況に合わせ、人民解放軍を用いて易姓革命対策を行うか、台湾侵攻で国民の怒りを外国に向ける計画を持っていると推測する。中国経済の破壊が酷く、易姓革命の可能性が高いなら、人民解放軍を投入して鎮圧。易姓革命の可能性が無いと判断すれば、台湾侵攻で国民の怒りを外国に向けることになる。

■習近平に突きつけられたカウントダウン
 台湾への軍事的圧力が高まる理由は、習近平が易姓革命に備えた動き。中国に潤沢な資金が有るなら、南シナ海で人民解放軍を活動させる。さらに、中国企業のデフォルトが経済全体を破壊すると判れば、企業を救済してデフォルトを回避する。

 もし中国企業の負債が中国共産党の限界を超えているなら、資金を投じて救済するよりも、易姓革命と台湾侵攻に備えるはずだ。だが怖いのは、人民解放軍が中国共産党の私兵であることだ。中国経済が破綻して資金枯渇と統制が失われたら?人民解放軍は金を求め、韓国・台湾・日本で盗賊行為を行う可能性も有る。

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