特別な夜

友人の顔を伺う暇がないほど、星が綺麗で月の光が水面をユラユラと漂い、絵画みたいな夜だった。やるせない気まずい雰囲気から始まった。人に自分の事を話すのはあまり得意ではない。それはしたことがないから。得意ではなくてする必要がないと思っているからだ。そんな事は意にも介さず、そんな雰囲気に連れ出した彼は固唾をのんで言葉を選ぶ自分を見ていると思ったし、星を眺めながらいつも通りの海に、いつも通り自分と話に来たような気もした。それでも、いつまでも自分の話を待ってくれている気がした。俺は煙草に火を付けて、風景に浸るふりをした。いや、多分その時点で風景に落とされていた。本来なら自分のことなんてナニがあっても話すことはない。けれど、ラフにも重厚にも受け止めてくれそうな彼とこの夜なら話してしまっても水に流すこともなくて特別に許してくれると自分が思えた「俺さ、」

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