東京記1

山崎まさよしのセロリが聞こえて僕は、昼下がりの西日射す水洗トイレに汚物が吸い込まれるようなえもいえぬ(えもいえぬ)感覚を覚えながら、25:12から断続的に続いていた細い眠りに別れを告げた。?寝惚けた頭で、人よりも長く伸びた前髪をかきあげる。目やにが溢れた両目を開こうとするのを、カーテンの隙間からもれさす、中国地方のそれよりも気の早い東京の太陽(5:30)がじゃました。

「お前、セロリで起きんなよー」という声が聞こえた。この声は、僕の吹奏楽部時代からの友人、シマエナガ健太郎のそれであるはずだった。
「うるせゑ、じゃあA都市の秋(Lamp)で、起きるんか??!」
僕は左手で右目を擦りながら、鼻炎に口呼吸を強制され灼けた喉を張り上げ、そんなふうな返事をした。僕の家族は1つの例外無く寝起きの態度が最悪で、僕自身も母や妹の寝起きDVの被害を受けた経験が幾度となくある。
「フン、貴橋の寝起きチクチク言葉、朝練の頃から変わっとらんのやな」と言われた。僕は去年の夏休みに顧問から痴漢の被害に会って以来退部届けも出さないまま、部活を一年以上すっぽかしていた。
「これからすぐご飯だから、2階に降りるよ」と遠くから荷物をいじいじ叫んだのは、この班のリーダーである中野孔太(仮名)である。本名は誰として知らない。
他にもこの部屋にはドキドキ文芸部くん(仮名)とすみっこ走り太郎(実名)の2人がいるが、今は2人トイレでよろしくやっているようだ。

僕らは拠点とした701号室からエレベーターで朝食会場の2階に降りた。未だに眠い。道中で僕をインスタのフォロワーから削除した元友人とすれ違い気まずかった。朝食はビュッフェであった。朝は胃袋が非常に狭い僕は朝食時間中、ずっと会場の隅で立っていた。

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