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ウーバー配達員が労組法の労働者になるのは本当に良いことなのか

ウーバーイーツ配達員らが作る「ウーバーイーツユニオン」が、東京都労働委員会(以下、都労委)に不当労働行為の救済申立てをしていた件で、都労委は11月25日、不当労働行為にあたると認め、ウーバー側に団体交渉に応じることを命じた。

弁護士ドットコム ニュースより

これはどういう事かというと、公平な立場で労使間(労働者と雇用者)の争いを解決し、良好な労使関係になるように設けられた行政機関である都労委が、これまで個人事業主として扱われていた配達員を、実質的に労働組合法の労働者として認めたという事だ。

労働者は、日本国憲法第28条で団結権・団体交渉権・団体行動権の3つ、いわゆる労働三権が認められている。そして労働三権を具体的に示した基本的な法律が、労働組合法・労働関係調整法・労働基準法であり、あわせて「労働三法」となる。今回のケースでは、労働三法のうち、労働組合法における権利を認められた形だ。

労働組合法
労働組合をつくり、会社と話し合いができることなどを保障した法律。
労働関係調整法
労働者と雇う側で争いごとが生じ、当事者同士の話し合いでは解決が難しい場合、外部の組織が間に入り、解決するための手続きを定めた法律。
労働基準法
労働時間や賃金の支払い、休日など、労働条件の最低基準を定めた法律。

もし団体交渉がスムーズに進まなければ、労働関係調整法が適用される可能性も高いだろう。
この決定は、短期的には配達員側に利益をもたらすが、長期的には配達員も雇用側(ウーバー側)も不利益を被るのではないかと私は考える。

まず短期的に考えた場合、配達中の事故の補償や賃金の支払いに関して、労働組合が干渉した場合、今までよりも配達員側に有利な条件を引き出せる可能性は高く、おそらく労働環境は改善するだろう。ウーバー側にしてみれば、事故の補償などによって配達員1人あたりのコストと手間が増大することになる。また、事故の補償によるコストがあまりにも大きいということになれば、ウーバー側は配達員にヘルメットやプロテクターを支給し、着用を義務付けるかもしれない。当然、ウーバー側は仕事を発注しにくくなる。

そして長期的に考えた場合、ウーバー側は雇用方法を変更したり、撤退することになりかねない。配達員は、隙間時間を活用して、オンライン上で仕事を受注して働きたいのに、その選択肢が狭まる結果となる。また、面倒な義務を押し付けられるかもしれない。
今回の決定は、雇用者側が仕事をオンライン上で外注し、それを受注した個人事業主が自分のスキルを活かして、時間・場所的にフレキシブルに仕事をするという流れを妨げることになるのではないだろうか。


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