家庭教師になるはずがお財布にされていました 1
※導入部分のみなので、ぶっちゃけ読まなくても大丈夫です。2から読み始めると即家庭教師になれます。しばらく続きます。
それとこれは...貢ぎマゾ向けです❤️
隣の家に住む女子高生の家庭教師をしてあげる。なんていうイベントが、まさか自分の人生で起こるなんて思いもしなかった。
自分で言うのもなんだが、俺は学生の頃からあまり目立つタイプではなかった。どちらかといえば目立たないタイプ...というか、教室の隅で本を読んでいるような奴で...。
つまりは全く目立たない陰キャというものだったわけである。悲しいが、これが現実なのだから仕方がない。
当然女の子との関わりなんてゼロに等しく、高校生時代に女の子と話したのは、次の授業何?などとたまたま近くにいたから聞かれただけだったり、邪魔だからどけと言われたり...ほとんど会話らしい会話はしたことがない。
そんな自分が高校生の女の子に勉強を教える...なんてことができるのだろうか?という心配も勿論あるのだが、そんな自分が若い女の子と関わる機会ができたことへの驚きの方が大きくて、今はそれどころではない。
どうしてそんなことになったかというと、事の始まりは隣の家の奥さんに声をかけられたことだった。
元々は隣の家は空き家だったのだが、一年ほど前に彼女ら...父と母と娘の3人家族、花村一家が引っ越してきた。
旦那さんとはあまり話したこともないが、奥さんは優しく親切な女性。娘さんは元気で可愛らしい高校生の女の子...という印象だった。
俺が朝出かける時に学校に行く娘さんとそれを見送る奥さんに会うことがよくあるのだが、こんな俺にも毎朝挨拶をしてくれる。
最初は話すこともまともにできなかったのだが、最近では一応毎朝挨拶を交わすくらいの仲にはなっていた。それこそ、奥さんとはちょっとした世間話をすることもある。娘さんとは...会話らしい会話をしたことはないが。
そんなある日、いつも通り花に水やりをしている奥さんに挨拶をする...とそのまま世間話に。
「そうそう、〇〇さんのお宅の子は隣の県の名門の大学を受けることにしたらしいのよ」
「というと、K大学ですか?」
「そうなのよ...凄いわよねぇ。うちの子なんて、来年受験なのに全く勉強してないのに」
溜息をつきながら、奥さんはそんなことを言っていた。それくらいの歳の子供を持つ親としては、どこの大学を受けるか...受験勉強をしっかりしているか...などの問題は大きなものなのだろう。
しかし、自分も高校二年生の時に真面目に勉強していたかと聞かれるとそうでもないため、なんとも言えない。
「どこの大学を目指すかは、もう決まってるんですか?」
どこに通いたいのかにもよるだろうし、いいとこを目指せば目指すほど勉強を頑張らなきゃいけなくなるのは確かだ。
まぁ、そもそもの学力がどの程度なのかを知らないから余計に口出ししづらいのだが。
「それがどこに行きたいって言うのも決まってないのよ。勉強も得意じゃないしねぇ」
花村さんは再び大きな溜息をついた。なるほど、どうやら娘さんは勉強が好きじゃないようだ。
「塾に通わせようにも、ペースについていけないって言うもんだから...困ってるのよ」
なんでも一度塾の体験講習なるものに参加したらしいのだが、ぽんぽんと進んでいく周りのペースについていけず、結局塾には通わなかったらしい。
「だから家庭教師でも付けようかと悩んでるのよ。でもそう簡単にいい先生が見つかるかもわからないし」
家庭教師か...確かにそれなら個人のペースで勉強できるだろうし、苦手なところを重点的にできるのかもしれない。
でもいい先生を見つけないと、今度は先生との合う合わないがあるのだろうし...難しい問題かもしれない。
「それでどうしようかと...思ってたのだけど......」
「...?どうしました?」
ふと、奥さんの言葉尻が小さくなる。何かを思いついたような目で俺を眺めながら、一人で頷く。
「...確か、貴方××大学に通っていたわよね?」
「えぇ、まぁ...」
「じゃあ、勉強は得意なのかしら...?」
「それほどでもないですけど...」
確かにそこそこの大学には通えてるかもしれないが、ただ高校時代の授業中に馬鹿真面目に授業を受けて、高三の時に塾に通わされてそれなりに勉強をしていただけ。
そこまで頭がいいわけでもない。
「確かバイトを探してるって先週言ってたわよね?」
「えぇ、まぁ」
確かに大学の合間にバイトをしてお金を稼ぎたいという話を先週だかにした覚えがある。
高校時代からバイトはしていたのだが、受験勉強が忙しくなりやめてしまった。それでも大学に入ってすぐの頃にバイトは再開していたのだが、結局大学の勉強が忙しくなってやめてしまった。
それでもやっと大学の方が落ち着いてきたからまたバイトを始めようと思って、今はバイトを探しているところなのだ。
「なら...うちの娘の家庭教師をお願いできないかしら?」
「んぇ...?」
思わずおかしな声を上げてしまった。急に何を言い出すんだこの人は。
「当然お給与はお渡しするわ。あの子の受験が終わるまででいいのよ」
お願い、と言って手を合わせる花村さん。そうは言われても困る。
この俺が、女子高生の家庭教師だって?無理に決まっている。そんなものが務まるわけがない。
「急に言われても...俺だって勉強ができるわけでもないですし、ちゃんとした方に教えてもらった方がいいですよ」
俺なんかにそんな大役が務まるわけがない。勉強を教えるどころか、最悪まともに話すことすらできない気がする。
それに、そもそも何を教えていいのかわからない。
「大丈夫よ、あの子の教科書や参考書に沿って教えてくれるだけでいいわ」
「そんなこと言われても...」
「貴方が相手なら、あの子も人見知りしたりなんてないだろうし安心だわ。だから...お願いよ」
結局、奥さんの押しに勝てずにそのまま引き受けることになってしまった。
「来週の日曜日からお願いね、娘にもしっかり話しておくから」
と奥さんは笑っていたが、やはりできる気がしない。かと言って、今更断るわけにもいかないのも事実だ。
とにかくしっかりと教えられるようにならなくては...と、家に帰ると慌てて高校の時の教科書を引っ張り出したのだった。
そもそも、まともに会話ができるかどうかも危ういので、それができなくてはこれも無意味に終わるのだが...。
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