ありんこ

※震災の呼称が閣議で「東日本大震災」に 決定した2011/4/1。
 その翌日に某所で書いた日記の再掲です。


私が子どもの時、今思えば残酷なことをしていた。 


ある家の玄関先にあった大きめの石を 
よいしょっと持ち上げてひっくり返すと 
そこに住んでいたありんこ達が、必死で逃げ惑う姿が見れる。 

貯めていた食物を必死で運ぶもの、 
空を仰いで威嚇するもの、 
卵やさなぎを抱えて必死で逃げようとするもの 

その必死な姿を見るのが興味深くて 

いや、正直言って面白くて 

私は何度も何度もその前を通るたびにひっくり返した。 
そのたびに巣は壊れ、しかしその後、きちんと修復されていた 
何度でも、何度でも… 

しかし、ある日を境に 
彼らは居なくなった 

彼らは一体、何処に行ったのだろう 


地球から見たら、私達はありんこ 
いやそれ以下の微生物のようなもの 


無力だ。余りにも無力だ 


しかし、それでも私達はここで生きるのだ 
何度でも、何度でも、這い上がって生きるのだ 
壊れたものを直し、築き上げるのだ 


あのありんこ達も、余りにもここは危険だと学習して 
新しい場所で逞しく生き延びているだろう 
私はそれを確信している 


だって私達は、そのために、ここに来たのだから 

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