VRCHalloween2019を終えて
お礼
10月半ばにプレ集会を開催し、その後10月26/27/31日の3日間に本番として集会を開催いたしました。そのどちらにおいても、予想通り、私はインスタンスが満員になっては次のインスタンスを立て…と慌ただしく動き回るかたちになり、来てくださった皆さんお一人お一人にゆっくりお話しする時間を割けませんでした。それを申し訳なく思うと同時に、一方で、当初「こうなったらいいなあ」と思っていたような、参加してくださった方々が(ほぼ初対面の人ばかりだったと思います)自発的にどんどん会話の輪のなかに入っていって繋がりを作っていってもらえたのが、何よりも有り難かったです。本当にありがとうございます。
また、「すでにVRCに慣れている人たちはVisitorやNewUserの人がいたらどんどん話しかけてほしい」と事前に軽く呼びかけていたのですが、それもとても活発におこなっていただいていたようで、TLで当日の写真を見ていると、VRCを始めて日が浅い人とも一緒に写っているものが見られたりして、本当に嬉しく思います。
モデリングに挑戦して遊びに来てくださった方。それを迎えてつながりを広げてくださった方。様々な面で、ご参加くださった皆さん全員の協力や心がけがあっての盛況だったと思っています。今回はこのVRCHalloween2019という催しにご参加くださり、本当にありがとうございました!
事の発端とその顛末 【発端】
そもそもVRCHalloween2019というイベント・ムーブメントとは何なのか/何故それをやろうと思ったのか?という話を表立ったところでお話ししていなかったので、今一度ここに書き記しておきたいと思います。
バーチャルマーケット3の入稿締め切りのてんやわんやが終わったちょうどその頃、TLで「モデリングに対するモチベーション」についての意見が散見されていました。語弊を恐れずにそれらを大きく要約すると「今もう既にこんなにレベルの高いモデルがたくさんある中で、自分が苦労してモデリングする意味って何?」という悩みです。こういった立ち位置の意見は、正直、ものづくりをしているとどんな分野でも出会うものだと私は思います。「こんなに上手な絵描きがいっぱいいるのに自分が描く意味って何?」等。どんな分野でもありえます。
こうした問いには、さまざまな強度の返答があります。最も"強い"返事としては「じゃあやめればいいじゃん」。当たり前ですが、私はこの返答はしたくありません。一方、最も"弱い"返事としては「そんなことないよ、あなたが作りたいものを作ることに意味があるんだよ!」といった感じでしょうか。これは、私は完全に同意しますが、しかし先述の悩みを心に深く抱いてしまった人への特効薬にはならないような気がしています。この問いを胸に抱いてしまった人は、すなわち、自分と他者を比べて上下をつけることに意識が捕らわれてしまっているので、本当の特効薬は「価値基準はそこ(=他者との比較)ではない」ことを真に理解させる言葉や体験であると私は思うんですよね。この特効薬を私はずっと探していました。
で、こういうことをずっと考えていたところで、ふと「そういえば私は去年(2018年)頭ごろにモデリングを始めるにあたって「既にこんな上手な人がいるのに私が今から勉強しても無意味…」みたいなこと、考えたことも無かったなぁ」ということに気づきました。そして思い出したのですが、そう、当時はまだ周りに自作モデルを着ている人が比較的少なかったんですよね! なるほどなぁ、と膝を打ちました。同時に、自分があの「周りみんなスタートラインがほぼ一緒」みたいな時期・空間にいたことがいかに幸運だったのか、いかにそれに価値があったのかに気づき、それをある意味で失ってしまっている現在が非常に惜しいなあと思うようになりました。
私はやっぱりどこまでいっても「モデリングは楽しいし、やってみてほしいな」という気持ちがあるので、それを言ったとき「でも(自分みたいな初心者モデルは笑われるんじゃないか…等の)環境が怖い」と言われると、なるべくそんな環境は壊したいなと思っています。正直「VRC全体がそういう初学者に優しい空気になったらいいのにな」とは心の底では思っていますが、VRCというのはもはや"社会"とか"世界"みたいな広大で多様なものなので、私の思いひとつが全体に浸透するなんてことは不可能です。しかし、ならば、私のできる範囲である種のサンクチュアリというか「このエリアでは初学者を指さして笑うような輩はいない」という空間を作りたいなあと思って動き始めたのがVRCHalloweenというイベントの始まりでした。
私がしたことは大きく分けて2つです。
①初学者大歓迎!のイベントを開く
②とにかく易しいモデリング動画を作る
この2つは両方とも初学者への補助が目的でした。実は最初は「初学者を迎える側(=既にVRCでバリバリ遊んでいる人たち)」への檄文みたいなものも作ろうかな〜と思っていたのですが、なんかもうそこまで旗を振るのは差し出がましいし、そこまでエモーショナルにやる必要もあるまいと切り落として、ただひたすらに初学者を応援することに専念しようと決めてイベントと動画の2つに絞りました。
前回動画を作って公開した際に送られてきていた質問などを元に、さらに初学者に易しいように徹底してハードルを下げた動画を心がけました。集会で「初めてモデリングしました!」という方がたくさんおられたので、この点で動画は及第点だったのかな…とようやく肩の荷が下りた気持ちです。
そんなこんなをしている間に集会が始まり、怒涛のなかで終わりました。
ずっと心のなかにあった「初学者が周りの目を怖がることなく、ただただモデルを作って動かす楽しさを体験してほしいなあ」という私の願いは、叶えられたんでしょうか。
事の発端とその顛末 【顛末】
簡潔に言うと、叶いました。
というか、結論から言うと「それどころじゃねえな」という感じだったように思います。クドクドと上記で語ったような「周りは既に上手な人だらけだし…」とか「こんなにきれいなモデルが売ってるのに…」とか、そんな悩みを消し飛ばすどころか感じる瞬間さえ無いぐらいの、ただひたすらに「作るの楽しい!!!!!!」というパワフルな覇気に溢れていました。もしかして、「怯える初学者」というのは私が勝手に妄想していた幻想だったのでは?とさえ思いました。実際、妄想だったら最高です。
私はずっと、「モデリングに挑戦してほしいなぁ」という自分の気持ちの根源は「自分でものを作って、それが動くって楽しいよ」と思っていたのですが、今回たくさんの方の初挑戦を見て、もしかすると「できないことに挑戦して、できるようになるのって超楽しいよ」なのかもしれない、ということに気づきました。今回のイベントで初めてモデリングをした人のほとんどは、ほんの数週間前まで、自分が「3Dモデリング」ができるなんて想像すらしたことがなかった人たちだったんです。
同時に、これは前述した「こんなに上手な人が既にたくさんいるのに自分がやって意味があるのか?」への、根源的な解答になるのではないかとも私は思います。「あなたがあなたを超えることに意味がある」のだと、今はそう思います。
当初想定していた「初学者が笑われないような暖かい空間が作りたい」という願いは、蓋を開けてみれば「初学者を始めとしたモデラーの人たちのものづくりへの熱気でムンムンのパーティ」という、完全に上方向にアップデートされた最高の集会というかたちで叶ってしまいました。本当に、参加してくださった皆さんのおかげだと思っています。
集まってくださった人たちは漏れなくモデリングへの情熱と優しさを備えた人々だと思っているので、今回がきっかけでVRCを始めたばかりだという人は是非今回出会った方々との縁を大切にしてもらえれば嬉しいなと思います。きっとこれからも楽しく一緒にモデリング話などで仲良くできると思います。VRCは現実社会と完全に同様に、"付き合う人"が本当にその楽しさを左右していくという側面があるので…。
悟ったこと
私が本当に伝えたかったのは「できなかったことができるようになる楽しさ」だと気づきました。これは、なぜ私が執拗にドがつくほど初心者向けのモデリング講座を作るのかという点にも繋がってくるのだと今更悟って、自分で驚いています。
ところで、最近、私は確かにモデリングにおける各分野の細かい「できないこと」は勉強して挑戦しているのですが(例えばスカルプトに挑戦したり、Substance Painterに挑戦したり)、もっと大きな意味で「できないこと」に挑戦ってあんまりしていない気がしたので、少し自分を振り返って「やってみたいけどできないと思い込んでること」を探しています。
例えば、私は音楽に強い憧れがありますが、作曲なんて「できっこない」と完全に諦めて生きてきました。「モデリングなんてできっこない」という人に向けての動画を出している自分がこの姿勢じゃあ示しがつかないな、と思う節もあるので、次に挑戦するなら音楽かなあ、なんて思っていたりします。
これから
今回、VRCHalloweenを通してモデリングに挑戦してみた方全員が全員、今後ばりばりモデリングを続ける必要は無いと私は思っています。もちろん、ドはまりしてどんどん上手になって凄腕のモデラーになっていくのも最高です。一方で、何度も書いているように、私が感じた「本当に伝えたかったこと」は「できないことに挑戦して、できるようになること」なので、今回の「モデリングなんてできると思ってなかったけどできるようになった」という体験を通して得た自信を胸に、次の全く別の「できると思ってなかったこと」にも挑戦してみてもらえれば、それもまた最高の続きだと思っています。芸術でも、運動でも、勉強でも、何でも良いです。自分の強化、自分の引き出しを増やす、自分の鍛錬、楽しい。そう思ってもらえれば、何よりうれしいです。
おまけ
VRCHalloween2019は、覚えている人は覚えていると思いますが、その正式名称をVR Creative Halloweenといいます。VRChat Halloweenではありません。
VRChat自体はもちろんですがVR/AR分野全体において時の流れが異様に早く、来年の今もVRChatやVR/AR分野の流行が現状のままということは考えにくいです。また大きな潮流の変化があるかもしれません。なので、その時その時に私が考える「今やりたいこと」「今やったら楽しそうなこと」をやろうと思っています。もちろん、VRChatが楽しかったらVRChatで何かをするでしょう。
そんなかんじです。長々とポエムを書いてしまいました。ここまでお付き合いありがとうございました!また今後も私は私のやりたいことやできないことをやっていきます。
バーチャルマーケット4も次の春に控えてますし、楽しんでいきましょ〜
zen
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