見出し画像

2024年新茶〔熟成茶〕販売開始につきまして。

2024年の新茶〔熟成茶〕販売開始におきまして、一通り説明させて頂こうと思います。

無我夢中でお茶に向き合う中でどんどん記憶や興味のポイントが変わっていき

ここで発信する相手の皆様との温度差やポイントがずれてくる

という事は何となく分かってはいるものの

うまく段階的に説明出来てないな と感じる事が多々あって、本来伝えられる感動や味わいを伝えられていないのは勿体無い事だと思ったので記しておこうと思います。

この文章で全て理解してもらう事ができるとも思ってないのですが、新たな興味や、自分が見ている世界の面白さを少しでも共有できたらいいなと思います。

さて、本題に入りますが
新茶の時期というのは通常5月頃がピークを迎えまして、一度は八女鰐八のお茶もそこでリリース致しました、が早々に販売を停止致しました。

この理由を結論から言うと、
「今年の製茶〔お茶を仕上げる工程〕は
"浅蒸し"と言う手法で行ったため」

となります。

ここ最近のお茶、特に旨味を特徴とする八女茶は

浅蒸しとは逆の深蒸しと言う工程が主流となっています。〔全ての農家さんがそうではない〕

深蒸しは茶葉の発酵を止める時の蒸し工程の深さを表すのですが、

浅蒸しだと茶葉の青臭さが残り、深蒸しになるにつれてその青臭さが消えて、仕上げで火入れをした時の甘みや旨みが乗りやすい、
逆に浅蒸しだと青さがその甘みや旨味を加える事を邪魔してしまう、と言ったイメージです。

では何故浅蒸しを行なったのか?

これは自然熟成によって青臭さが消える過程でより繊細な香りとより茶葉本来の風味が出るのではないかと考えたからです。

八女鰐八の茶葉は自家製の有機施肥から無施肥の自然栽培の茶園で作られていますので、「熟成」や「萎凋」など自然な時間の経過などで付加する風味に向いている茶園です。

簡単に言うと
肥料などの窒素分が少ないと
時間経過→熟成

肥料などの窒素分が多いと
時間経過→劣化

と言ったイメージです。

〔中国の茶葉はワインのように10年ものなどもあり、八女鰐八の無施肥の叶迫茶園の白茶は昨年のものでも未だ風味を増し続けております〕

なので私の追い求めるお茶のオリジナルをさらに攻めるしかないと挑んだのが今回の浅蒸しでした。

そして荒茶〔最終仕上げ前の茶葉〕の風味でとても青々しく茶葉の形状などを見ても仕上げ〔火入れ〕を行なった後にとても良くなりそうだと胸を躍らせてまだ仕上げの茶葉を飲む前に販売準備を進めました。

しかしそこが私の詰めの甘さと経験の浅さでした。 

仕上げ後の茶を飲んで思ったより青さが抜けておらず、風味も今一つ伸びてこないと言った具合でした。 

しかし毎年仕上げから2.3日すると味わいがどっしりしてくると言う経験もあったので販売を開始致しました。

しかし2.3日後にも満足行くものとならず販売を停止という決断をしました。

その間に販売した方々へは全額返金か熟成後の再送をご提案させて頂きました〔大変ご迷惑をおかけしました〕

そこからひたすらお茶の熟成について調べて、自分で釜炒りの釜で加温温度を探りながら再度火入れをしたりと焦りまくっていましたが

奈良の月ヶ瀬のお茶農家さんの岩田文明さんにお電話で相談した時に

「良い原料、良い作り手さんのお茶はどんな状況からでも必ず良いお茶になりますよ。加温よりお茶を信じて自然熟成を待ってみた方がいいと思います。きっと良いお茶が出来ますよ」

というアドバイスを頂きました。
本当に救われました。

さすがオリジナルのお茶のパイオニアでした〔気になる方は月ヶ瀬健康茶園 岩田文明で検索してみて下さい〕

そこから茶を信じると言う事で真空の状態での自然熟成を経て毎日、毎週、毎月と徐々に青さが抜けて茶葉の味がグッと前に出てきている事を実感しました。

そして今回の販売再開に至る及第点までようやく達しました、、、。

正直なところまだまだ熟成の余地はあると思っています。特に萎凋煎茶に関しては先ほどの岩田さんの所だと一年熟成させるのだとか、、。

しかし確実にうまいお茶になった事、そして先祖代々からの茶農家では無い私が挑む過程が見えるお茶である事〔皆様の力で完成した手摘み60kgも含めて〕
なども含めて、お茶好きはもちろん、そうでは無い方にも与えられる価値として自分の人生に挑む、夢を、浪漫を追い求める姿を込めたお茶である事を私のお茶と定義してこのタイミングでの販売を開始致します。

さらなる熟成の進み具合や風味の変化なども今後報告していきます。

中国では新茶は陰陽の世界の"陰"だとされていて、それが夏を超えた頃に"陰極まって陽に転ずる"と言われているそうです。

そして八女茶も昔は新茶の開封は10月頃だったと言う話を良く耳にします。

なので昔は今みたいに深蒸しが主流では無く浅蒸しが主流だったものが、近代で大量生産が進むに連れて質より量の流れから深蒸しに変わり、作物は初物こそ値段が付くと言うそれに準えて品質改良が進んだり徐々に浅蒸し→熟成の流れが消えて行ったのではないかと想像します。

特に山付きのお茶はそう言う部分から重宝されていたのですが、時代の流れや品種改良や作り手さんたちの努力でその差別化を可視する事が難しくなっている現状です。

それは素晴らしい事であると同時にそちらに比重がかかりすぎると醜い事にも思えます。

どちらにせよ私の求めるお茶はかっこいいお茶です。成長するお茶です。

来年は今回の学びから新茶時期に出せる蒸し具合と熟成を促す浅蒸しを作ろうと思います。

今回の"熟成"というテーマから最終的には仕上げの火入れ機械一式を購入すると言う歯止めが効かない展開となりましたが、必ずこれもものにしてやろうと思います。

私がパッケージにこだわるのと同じように手にした時の感覚や新茶であると言うスペシャル感に満たされると言う事も紛れもなく人間の特性です。

昔はそんなものは概念であり本質ではないと浅蒸し一本勝負で行っていたでしょうが、やはり最終的には人に喜んでもらえる事が大切だと考えるようになれたのは少しばかりの成長です。

しかしそこに甘んじる事なく、まだまだ失敗と成長を繰り返して行きますので皆様のエンターテインメントとしてお付き合い下さい。

長くなりましたが、これでようやく2024年のお茶を世に解き放つ事ができます。

抽出や茶葉の特徴などお茶の事、何でも聞いて下さい。

ありがとうございました。

八女鰐八 高木


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?