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車いすからベッドへの旅

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毎日、天井を見つめている。ベッドで横になっていると、ぼくの六畳の部屋半分と、ヘルパーさんが仮眠する隣の四畳半三分の一ほどしか視界には入らない。 かぎりなく狭い世界の中で、なにを考…
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#脳性マヒ

春を待つ手紙

 政治に携わる人の演説を聴いて、投票したい気持ちに駆られたことがあまりない。 思想をこえ…

手を入れる

 おととい、コチュジャンをきかせてホルモン煮込みをつくってもらった。  旨かった。 行きつ…

耳を澄ます

小さめの枕を 首筋まで深く差しこみ 上目遣いに 白い壁を見つめる ある日のためらいに 立ちも…

言いわけ、疲れ、ノスタルジー

 ほぼ毎日、つづけていたnoteへの投稿が一日あいてしまった。 文章の長短にはかかわりな…

うちの子

 長年、働きつづけた洗濯機が動かなくなった。 説明書を探しても、整理の悪さが響いて簡単に…

お米

 佐野くんがいつものペースで、台所からゆっくりとベッドのそばへやってきた。 お米の入った…

順番

 徒歩10分、いつものスーパーへ買い出しに行った。 冷蔵庫には、枝豆ご飯一食分と里芋の煮っころがし、海苔の佃煮とたくあんがあるだけだった。  今日の泊まりは食通ヘルパーのHくん。 ちょっと残念なことに、彼がシフトしている日曜日、水曜日、金曜日以外のヘルパーさんはほとんど「食」に興味をもっていない。 だから、ぼくは「旨さ」への共感をあきらめて、身内(ヘルパー派遣事業所)のオフレコぎりぎりの話題で相手をくすぐってみたり、世の中の矛盾に分け入ったり、黙々と淋しさもいっしょに噛みし

赤い傘

 朝から、ぼくは勝負に出た。 昨日、おとといと腰の具合が芳しくなくて、目標の二時間にはは…

とどまる、ながれる

 いつものように、枕もとのスピーカーから唄が聞こえている。 こうして一行がはじまったので…

包みこむ

 「友だち」を幅広く捉えれば、暮らしをサポートするヘルパーさんたちから立話(ぼくは電動車…

タイムリミット

 真夜中から明け方にかけての豪雨がうそのように上がって、いつもの訪問入浴の人たちが帰った…

見送る

 介護技術の向上をめざしてストイックな方向へ走りはじめたYくんは、わが家でも彼の代名詞だ…