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車いすからベッドへの旅

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毎日、天井を見つめている。ベッドで横になっていると、ぼくの六畳の部屋半分と、ヘルパーさんが仮眠する隣の四畳半三分の一ほどしか視界には入らない。 かぎりなく狭い世界の中で、なにを考…
運営しているクリエイター

#力を使わない介護

三日前と今夜

 部屋の白い壁を眺めていた。  もし、どんな願いでもかなえられるのなら、ぼくの最期の息が…

二十時三十分のいまむかし

 パソコン入力の得意なヘルパーさんの泊まりのとき、夕食を早めに済ませスタンバイをする。 …

深夜の胸やけ

 久しぶりに、ヘルパーさんと買い物へ出かけた。ここのところ、悩まされている腰痛もおとなし…

高田渡さんのこと

 渡さんを想うとき、自分が障害者であることの幸運に感謝したくなる。  ぼくが大阪へ出てき…

施設では経験できなかった

 二十年近く前だったと思う。  ある土曜日の午後、ぼくは自宅から十五分ぐらいの住宅街にあ…

ヘルパーさんの言葉遣い

 「清拭」という介護用語がある。お風呂に入る代わりに、全身を熱いタオルで拭くイメージだ。…

面倒くさい「積み残し」

 地味な話を書く。だれも見向きもしてくれないかもしれない。  ぼくは、すぐに「積み残し」をしてしまう。  ものすごく短時間ですむことでも、ズルズルと手をつけないままで、記憶が定かではなくなり、慌てて助けを頼んだり、確認をしなければならなくなったりする。  今日もこの文章を書きながら、二つの「積み残し」が気になっている。    一つは、ガラケーの充電器の場所替え。  もともとは、デジカメ用のポーチへガラケー本体といっしょに入れて、車いすの背もたれに吊り下げていた。  ぼくは根

まつ毛が長いといわれても

 訪問入浴の女性スタッフや看護師さんたちから、「まつ毛が長いですねぇ」とうらやましがられ…

頭をぶつけるひと、足をぶつけるぼく

 「ドン」という鈍い音が、四畳半を隔てたぼくの部屋まで聞こえた。  「またやりよったか」…

ありふれた一日

 いつものように、日付が変わってから眠りについた。 トイレに一度、寝返りのために二度、泊…

陽のあたる山脈

 先日、昼間からうとうとしていたら、ガラケーのショートメールの着信が鳴った。それだけで、…

ピンクのシーツに横たわる

 わが家は、朝から大爆笑だった。  来週には、記録的な早さで大阪も梅雨に入るという情報か…

自分で決めること、おまかせすること

 「思いこみコロナ」が引き金になり、一日のほとんどが天井を見つめる生活になり、一年以上が…

二千二十一年 五月十一日

 夕食を終えて何か一本書こうと思っていたら、一時間ほど居眠りしてしまった。  先週末、不十分ながらもぼくを「書くこと」へ駆りたてたテーマのひとつが一段落して、心に空白がうまれた。  noteへの投稿をスタートするとき、すこし勘違いして「ブログ開設にあたって」という一文を書いた。  内容は異なるかもしれないけれど、あらためて、なぜ自分を書き残そうとするのか、一段落を終えた高ぶりにまかせて考えた。  生まれつきの障害によって、日常的に自分以外の人にゆだねなければならない時間の重