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車いすからベッドへの旅

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毎日、天井を見つめている。ベッドで横になっていると、ぼくの六畳の部屋半分と、ヘルパーさんが仮眠する隣の四畳半三分の一ほどしか視界には入らない。 かぎりなく狭い世界の中で、なにを考…
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2021年11月の記事一覧

間(ま)

 ぼくの中で親友と呼べる三人のうちのひとり「中村ブー」が、妙にしみじみと言ったことがある…

商店街のジングルベル

 この間、久しぶりに生麩まんじゅうを買いに橋を渡った。 以前はゴールデンウィークから九月…

投げかける

 あの日、ぼくは扇町公園での集会に参加していた。 山にかこまれた施設で、生涯を過ごすつも…

ホワイトボード

 この一週間、ホワイトボードの購入品の欄にずっと消されないものがあった。  それは「だし…

本心

 この間、片づけてあるはずの場所に「流せるおしりふき」が見当たらなかった。 急を要する状…

もし…

 サポーター(ヘルパー)さんが食器を洗いに行った途端、鼻の脇が痒くななることがある。呼び…

その人

 二車線ある幅広い道路の信号のないところを渡りきって、住宅街のシャレた喫茶店がもうすぐ見えてくるあたりだった。  めずらしく顔をまっすぐに上げて歩いていると、その人はグングン近づいてきて、そのまますれ違っていった。  眼は切れ長だった。 視線は確かで、その人の心を遮るものはないかのようだった。  鼻筋はまっすぐに通っていた。高くもなく低くもなく、それでも、まっすぐに通っていた。  口もとはしっかりと結ばれていた。  髪型はボブで、大人しめの栗色だった。  おそらく、素顔では

ぼくの日常

 サポーター(ヘルパー)のAさんは、ごはんを冷凍するときにラップでくるんだほうがいいとい…

逆さ読み

 今日、手のひらに装着するタイプのワンキースイッチを使って、初めてひとりで本を読もうと思…

しなやかに、ゆるやかに

 ある日、友だちと話していた。何気ない世間話だった。 「友部さん(尊敬するミュージシャン…

背景

 最近になって、いよいよ気持ちの浮き沈みが激しくなり、日常の会話の行き違い(マスク越しな…

日記

 午後三時、ひとりの時間を過ごせるように、気兼ねなく読書ができるように、ネット環境の課題…

ひとりごと

 ハゲかたはサザエさんの波平さんのように、後頭部と両サイドが残っていて、あとはおでこの際…

ルーツ

 昨日、念願のパソコンを操作するための手のひらスイッチをはじめとした主な部品が揃った。 お昼のサポーター(ヘルパー)のネット関係に詳しいKくんに設定を頼む予定で、急いで購入することになった。  ところが、手順通りに進めてもうまく作動しなかった。 Kくんの見立てでは、ぼくが使っているタブレットの差しこみ側の不具合か、変換アダプターが不良品なのか、それ以外は考えられないらしかった。  ぼくは、ミミズのフンにも足りないちいさな賭けに出ることにした。 Kくんに財布の数枚しかない千円