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【妄想ドラマ企画13】ふたご刑事

 麻布にある明治以来の名家・白川家に待望の男子が誕生した。
 しかも双子の男子
 兄は白川裕司、弟は浩司と名付けられ大きな洋館で何不自由なく育てられた。

 やがて二人が二歳になった時、大きな試練に見舞われた。
 父親の度重なる浮気が原因で母親が離婚を決意。
 兄弟は人生の岐路にいきなり立たされた。

 兄の裕司は父親と共に白川家の後継として育てられ、弟の浩司は母親に引き取られた。
 農家出身の母は実家に帰る事も出来ず、子連れで仕事を転々としながら苦労を重ねた。
 子供の目から見ても美人系だった母はやがて築地の板前と出会い再婚することになった。こうして弟の浩司は寿司屋の息子・高橋浩司として育てられた。

 それから三十年が経過した・・・。

 中央区晴海の高層マンションが立ち並ぶ地域で大手寿司屋チェーン店オーナーの一人息子が誘拐される事件が発生した。

 警視庁捜査一課の刑事となっていた白川裕司は、築地署に設置された誘拐事件の対策捜査本部に招集された。
 所轄署の会議室で極秘に開かれた捜査会議で、そこで初動捜査に当たった築地署の刑事より「犯人から身代金要求」の報告を受ける。

「犯人からの要求金額は1億2000万円です・・・・・・」

 刑事・白川裕司は身代金の高額な金額にも驚いたが、それより会議で報告する現場刑事の声に聞き覚えがあった。

(自分の声とそっくりだ。しかも1億2000万円という金額も何か聞き覚えがある)

 所轄の刑事は報告を続け、最後に私見を付け足した。
「この金額、私が想像しますに今年の・・・・」

分かった! 社長が落札したマグロの初競り金額と一緒だ!
 話を聞いていた白川裕司は思わず立ち上がって声を出してしまった。

「そうです。私の考えと同じです。なぜ分かったんですか」
 後ろの席で所轄の刑事が感嘆の声を上げる。

 聞き覚えがある声に裕司は思わず振り返る。

 そこで見たのは、自分とそっくりの人物の姿だった。
 裕司は幻を見たかのような顔をしていたが、それ以上に捜査会議で二人の姿を始めて見た刑事一同で驚きの声が上がった。
「なんだこれ、そっくりじゃないか」
 誘拐事件中にもかかわらず会議室にどよめきが上がる中

 裕司は頭の中を整理した。
「確か子供の頃に生き別れになっている弟が俺にはいると聞いていたが、まさか君が弟の浩司なのか!

「兄さん、僕も母から聞かされていました。浩司です。会いたかった」

 突然の運命の再会に捜査会議は一旦終了し、オイオイ泣き始めた兄弟の感動劇に刑事たちももらい泣きをした。

 そんな時、社長宅とつないでいるスピーカーから報告があった。
「寿司屋社長に入電がありました繋ぎます」

「おい電話だ」
 捜査を担当する管理官の一声で、裕司&浩司兄弟に緊張が走る。

「身代金の1億2000万円は、寿司屋の店員に地下鉄銀座駅改札前まで運ばせろ。社長の携帯を持たせることを忘れるな。もし刑事に張り込みさせたら息子の命はないぞ、ガチャリ・・・」

 あまりに短い電話に逆探知も機能せず。刑事側の動きを察した犯人の要求に管理官は落胆の表情を見せた。

 そんな時、会議室で浩司が立ち上がった。

「管理官!僕に身代金を運ばせてください。僕はこう見えても寿司屋の息子です。築地、銀座は庭です

 自らを危険にさらす行動に会議室に感心の声が上がった。

「弟よ、俺はお前がそう言い出すんじゃないかと思っていたよ」
「兄さん以心伝心ですね」

 そんないい話の時、管理官が口を挟んだ。

「気持ちはわかるが、犯人は恐らく複数ある銀座駅改札をあっちこっち身代金運搬担当を引き回して疲れ切らせた後に銀座線、丸ノ内線、日比谷線のどこかの改札から現れて金を持ち逃げする作戦だろう。捜査員が足りない上、犯人に目立ってもいけない」

「そんなこと心配に及びません」
 今度は兄の裕司が発言した。
何の為の双子だと思っているんですか、私が弟と一緒の板前衣装を着て、弟が疲れ切ったところで素早く交代します。捜査員は二人で十分です」
「兄さんもきっとそう言うんじゃないかと思ってました」

「お前たち、もし犯人をとりのがすようなことがあった場合取り返しがつかないぞ」
 管理官が見かねて口を出した。
「我々二人にお任せください。犯人の目星は立っています」

 捜査員を撹乱する犯人たちの指示に双子の刑事の入れ替わりトリックで挑む。

 それが「ふたご刑事」!


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