赤い風船の「はなかご」

 子どもの頃、祖父に買ってもらった最高級の菓子が、バナナクレープとこのはなかごだった。

 かつて赤い風船が天神地下街にあったころは、この思い出に容易に手が届いていたのに、今では博多駅の土産物店舗かオンライン通販でしか買えなくなった。
 自分にとってこのはなかごは、どんな高級フィナンシェにも勝る最高の一品だ。
 美味しいだけではない。思いと思い出のこもった美味しいは涙を誘う。

 久しぶりにオンラインで取り要せようかと思ったが、送料を見て怯んだ。送料無料にするには実に7000円分買わねばならない。さすがに42戸は多すぎる。
 胸を熱くさせるあの味も、懐の寒さに負けて断念した。
 今度博多駅に出たときに、焦がしバターの香りを頼りに探してみよう。

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