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徹子の部屋

皆さんこんにちは。徹子の部屋でございます。本日のゲストはブンゲイファイトクラブで優勝を飾った夜田わけいさんです。わたくしは以前から夜田さんの作品の大ファンでして、『エターナロイド』をとてもね、よく愛読しておりました。今回はね、どんな風にしてああいった作品ができたのか、その創作の秘訣を伺っていきたいと思っております。夜田さん、はじめまして。

――はじめまして。まさかこうして徹子の部屋にお呼ばれするとは思ってもみませんでした。

ブンゲイファイトクラブ、夜田さんはどのような心持ちで試合に臨まれたんですか?

――まず相手のカウンターが読めましたね。キックバックで来ることがわかったのですぐに対応できました。相手の「身をえぐるように」の譬喩からくるボディーブロー、あれはなかなかえぐかったです。スカウターで相手の戦闘力を測ったら1000を超えていたので、できれば避けたかった。そこでボディーブローの拳の上に着地して、顔面に蹴りを入れました。時間停止が使えなかったらできない芸当でした。「傷心的なパラダイス」この表現もなかなかきつかったので交わして四連突しました。この突きのダメージが大きかったように思います。

ブンゲイファイトクラブの作品も、そんな風にして書き上げたということでございますか。

――この話を書き始めたとき、最初自分が受賞したときのインタビューの内容を考える体でメモとして書き出したんです。これを書いたとき、公募を実は4つ出していて、どれも悪くない出来で、いずれ自分は賞を取るだろうなという確信があったので、どんな質問をされてもいいように、という準備からインタビューの応答を考え始めた。そうしたら、ブンゲイファイトクラブっていうのをやるっていうんで、それで2400字までできるっていうから、それならちょうど私の考えたインタビューの文字数と一致するなと思って。それでこれを書き出したんです。

わたくし夜田さんの作品を読んで、こんなものがあるんだとびっくりしたんですけれども、いったいどこに創作の源泉があるんですか?

――普段、私けっこうな量の本を読むんですよね。昨年読んだ本の数を数えたら、ぴったり365冊だったんですよ。読めば読むほど、周りの人々と自分が乖離していく感じがあるんですが、それでもまあいいかなと思いつつ、読んでいます。

受賞に際しどういうことを考えましたか?

――運が良かったですね。非常に運が良かった。同じような傾向の作品が少なかったのも良かったと思います。ただ、半分は実力ですね。それだけ、自分の書いたものが人々を動かしたわけですから。

夜田さん自身のこれからの作品については、どう思われますか?

――私自身、この作品で受賞できなければ、次はまた違った作品を考えていたと思います。私は作品と一緒に成長しています。作品が成長すると同時に、私も少しずつ成長する。そういう感じです。

今、なかなか小説の方で才能を咲かせようという方って、珍しいですよね。いったいどうして、小説を書こうと思ったの?

――私は書くということについて非常に長い間取り組んできました。生まれてからじわじわと言葉を覚え、字を書く練習をし、作文を書いて、文字を覚えました。愛する人に本気の手紙を何通も書き、返事をもらえたときは嬉しかったです。仕事においても、何かを書き残すということをいつもやります。小説を書くということは、その中の書く能力の一部を少し使っているに過ぎません。小説は、水や食べ物と違って、生きていく上で必要がないものです。小説を人様に買ってもらえ、読んでもらえるというのは、非常にありがたいことです。逆に、これは少し逆説的なのですが、こうして小説を書こうと思った理由は、私が何よりも小説を愛しているからだと思います。小説を愛していなければ、小説を書こうとは思わないと思います。

きっと影響を受けた作家さんもいらっしゃるんでしょう?

――中国の残雪という作家の影響は、私の中で非常に色濃いものとなっております。

ああ、残雪さんですね。いや、わたくしはじめて読んだときから、あなた残雪さんに惚れてるんでしょと思ったのよ。

――えっ、そんな(笑)。

あの技法的な作風からわたくし、作家残雪さんへの、並々ならぬ愛を感じたの。残雪さんがもう67歳ですから、恋愛するとしたらものすごい歳の差カップルになってしまいますけどね。まあ残雪さんはご結婚されていますから、なかなか今から恋愛は難しいかもしれませんけどね。

――確かに、私は日本文学や英語圏の文学よりも、中国文学、それも中国の現代文学をよく読んでいて、そちらからの影響が濃いと、自分では考えていたのですが、確かに残雪に恋……うーん、確かにしていたのかもしれませんね。どうしてそれらが自分の肌に合うのか、それは私にもよくわからなかったのですが、その理由がなんとなくわかったかも。

愛が、あなたにとっての文学なのね。

――そうですね。文学って、多分化粧品のようなもので、それを身につけた方が身体にとって心地よく、アレルギーもなく、心が元気になるのだと思います。我々が普段からキムチや麻婆豆腐を異国の料理と知りつつ食卓に並べるのと同じ感覚で、私はそれらの文学に接してきました。

なるほど、それで作品に中国語が使われているんですね。

――はい、そうです。

夜田さん、あなたの作品には色んな国の言葉が使われていますよね。外国語についても、やはり愛しているのかしら。

――私の中で英語は日本語の一部です。要するに、自分にとっての方言が英語なのです。カナダに留学したことで、喋れるようにはなりましたが、まだ巧みに操ることができる言語ではありません。ただ、英語は好きな言語で、留学したときにはジェイムズ・ジョイスの原書を買って読んでいて、それは今でも家にあります。

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