『口切』

白雪の 初音は木々にありやせん

色のなまりは見る目の癖か

さればその事今さらに

花のとがぞと 知るは初瀬よ

まだも芳野の古里寒く

衣かたしくまた折着せて

「起きていなんせな 明日の夜もあるに」

そんな別れのその後さえも

ままの川でも瀬は変われども

花ぞ昔の都の辰巳

今朝の寝覚めに覚めては路次の

塩瀬の音の呼子鳥


三下り。二斗庵作詞。玉岡検校・豊賀検校作曲。天明2(1782)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?