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~割箸と間伐材活用論争~

日本は実に自然豊かな国です。森林率は70パーセント近くあります。

ちなみに砂漠の国として強いイメージのあるエジプトの森林率は0.1パーセントです。EU諸国やアメリカ・オーストラリアなど俗にいう先進諸国のなかでも相当高い方で、近い割合なのが北欧のフィンランドやスウェーデンです。

北欧は特に家具類について有名なブランドが多いことで知られてますよね。
日本も以前は家屋はすべて木造住宅でした。樹木と共に暮らしてきた歴史があります。

ところが、近年は鉄筋コンクリート造りが主流となり、木造住宅を新築することも少なくなりました。お風呂の桶はプラスチックとなり、ご飯を保管していたおひつも活用されなくなりました。
林業の先進国のドイツでは自国材の活用率が90パーセント近くあるのですが、日本では30パーセントにも満たない状況です。

豊かな森を育てるうえで、必要になる作業として「間伐」という混みすぎた立木を一部抜き伐る作業があるのですが、この材を活用することができないまま放置したり、間伐の作業がされないまま放置されているところがほとんどです。
林野庁も放置森林について頭を抱えており、国費で間伐などをすすめていますが林業に従事している方たちの人口が高齢化、激減しており残念ながら日本の森は大いに荒れております。活用されなければ間伐を行う作業賃にすらならないわけです。
そこでたびたび注目されるのが割箸なのです。

日本で消費される割箸。実に95パーセント近くは中国からの輸入品なのです。材料はたくさんあるにも関わらずです。よく言われます。「割箸、がんばれ!」「出来るはずだ!」

考え方としては大正解です。樽を作る際に必然的に出てしまう端材を活用して箸を作ったルーツを持つ割箸はピッタリなんです。

実は何と30年以上前から提言が出ているにも関わらずなかなか進展しないまま単純に国内の箸工場が廃業し続けている事態になってしまっています。

いくつか理由を挙げるとしてみると、そもそも「割箸が環境破壊だ」という論争があることがひとつ挙げられます。

コピー用紙の軽減など、実際の森林資源の無駄遣いについて効果的なところもあるのですが、木の原型をとどめているものをたった一回使用して捨てるというイメージの悪さから大いに叩かれました。

また、今以上にTVなどのメディアの影響力が大きく、かなり捻じ曲げられた報道が多かったです。うちにも取材がそのたびに入るのですが、父が懇切丁寧に説明をしていたにも関わらず、キレイに切り取られてオンエアされているのを学生時代の自分も見ていました。

30年ですよ。30年。おんなじ話題をずっと繰り返してる。ここは情報の発信を僕たちの方から起こして、デマが繰り返されないようにしなくちゃいけないというのが超えるべきミッションです。

もうひとつは経済的な課題です。そもそもなぜプラントが中国に移ったのか。「安くて大量に作ることができたから」です。国内の間伐材の割箸が採用されない理由の大きな要因となっているのが「中国製造のものより高くてたくさん作れないから」です。

「同じ値段だったら選ぶよ」と僕も随分いろんな方から言われました。国が補助金を計上したタイミングで実際に廉価で大型顧客に卸した企業もありました。が、見事に全滅しました。続けることが出来なかったです。当たり前です。製造するコスト以下で販売することなんてありえないのです。

大型顧客の経済状況によって方針が変化して「消耗資材のコスト削減」ということになれば、真っ先に受注がなくなり廃業へ一直線です。ひどい話です。

私たちは言うなれば仲卸業者ですが、一部の同業者の対応も悪かった。あっさりと製造者を見切ったのです。弊社も含めて、業界として大きな責任があったと私は思っています。

理解をいただくお客様も多くいらっしゃるのですが、例えばニンニク。世界中の産地がありますが、中国産と国産では特徴もスペックも違います。同じ値段であるわけがないのです。いっしょくたに並べて論議するよりも、料理によって、使い分けをしていただくように別のアイテムとして選択してもらえれば良いのです。

お客様の土俵にすら乗れていないのが現在の状況です。選択肢のひとつとしてまずは乗せることがふたつめの超えるべきミッションです。

3つ目の課題。これが喫緊の課題でもあるのですが、工場の数が少なくなり、価格面、理念面をクリアして「是非採用したい!」というラブコールを送ってくださっても作り切ることができないというジレンマです。

これは僕たちが情報発信を行ってみなさんへの認知度を増して、工場の方たちに利益を還元して力をつけてもらって増産の体制ができる準備を整えてやっとクリアできる案件です。

高齢の方が多いだけに、事業承継についても影響してきます。

焦ってはいけないが、急がなくてはいけない。なかなかに僕たちのミッションはやりがいがある一方で課題も山積で興奮します。

「昔は、木と人は仲良しだったんだよ」

となりのトトロの中で、サツキとメイのお父さんが話しています。
何となく、なのですが
この言葉は、僕たちがDNAレベルで共感や理解ができるもののように思えてならないのです。

だからまず、嘆くより信じて行動してみることにしたんです。

いつのまにか、道になっているかもしれませんからね。

埋もれてしまっている宝石がたくさんあるように思います。文化だったり、製品の場合もあるけれど一番は人間の可能性です。見つけて、発信してよりよい世界を共に生きましょう。