FGOと先輩と片思いのゲーヲタ
こんにちは。学校の授業の延長で短いですが恋愛小説を書いてみました。感想があると嬉しいです。
会社の昼休みの時間。コンビニに行って、いつものおにぎりを買い、会社の自分の席でFGOをやりながら食べる。何か黒いオーラが出ている気がして周りの席を見る。オーラは隣のデスクの先輩から出ているようだ。俺が惚れている、美人で仕事のできる先輩の彼女が血走った目で横になった携帯を見ていた。
(……ん?)
何事かと思ったが、すぐに表情の意味を知ることになる。見知ったガチャ画面。同類なのだ。いつもの先輩のイメージからは想像できなかった。
「「あっ」」
先輩と俺の、高い声と低い声が重なる。
クルクル回転している輪が金に光り、アヴェンジャーのタロットカードが出る。だが、先輩は崩れた。どうやらお目当てじゃなかったようだ。横にしたスマホを両手で持ち、プルプル震えている。
「中村! 今日の帰り、付き合いなさい!」
「え!?」
どうやら横で見ていたのがばれてしまったらしい。内心うれしいのだが会社の中で先輩はかなりの酒豪と言われている。それに対し自分は飲めない。先輩が圧をかけてくるので仕方なく従うことにした。恋愛にはまだ発展しそうにない。
「なんで出ないのよ~」
先輩は会社の近くに住んでいるらしい。いざという時のために会社の近くの安い居酒屋でかれこれ数時間は飲んでいる。彼女は何杯目か分からないビールの入ったジョッキをカウンターに叩き付ける。
「先輩、もうそこらへんにしておきましょ? 送りますから」
「なかむらぁ~、もっと飲めよぉ」
わかってはいたが酔うと人間、面倒くさくなる。だが酔った先輩がかわいいとも思ってしまう。
「勘弁してくださいよ」
酔いつぶれかけている先輩はもう何を言っているか分からない。さすがにお開きにしたほうがよさそうだ。勘定を払い、崩れた先輩を背負う。背中にやわらかい物が当たっている気がするけれども気にしないでおこう。
「先輩、道教えてください」
「そこをぉ、みぎぃ」
言われたとおりに歩いていると高そうなマンションの前に着いた。
「カードと鍵はありますか?」
この手のマンションは安全のためにオートロックになっている。解除するには鍵に加えてカードが必要になる。
「おぉ、カバンのなかぁ」
先輩をいったん壁に寝かせて罪悪感を持ちながら中を見る。
「これですか?」
「そぉ、そぉれぇ」
先輩を背負いなおし、カードを入り口のパネルに当てる。とりあえず部屋の前までは送っていくか……。
「先輩、どこの部屋ですか?」
…………返事がない。これ、完全に寝てるわ。
「あれ、中村じゃん。背負っているのって……」
「山本!もしかしてここに住んでる?」
「うん。やっぱりお隣さんじゃん」
山本は中学の友達でお互い上京したことは知っていたが連絡は取り合っていなかった。
「ちょうどいい、先輩の部屋まで案内してくれ」
「いいぜ、だが美人だからって襲うなよ? ここの住人うるさいの嫌がるからな」
そんなわけない、そんなわけは……。
「まぁ、お前にそんな度胸ないよな」
「なんかむかつくなぁ、否定はできないけど」
「あ、そこ。お隣さんの部屋」
そういわれて先輩の部屋まで来た。鍵はさっきとっておいたから、まぁ……しょうがないということで開けて入る。
「ありがとな、今度どっか飲みに行こうぜ」
そう言い残し、扉を閉めた。
……広い。さすが先輩。きちんと片づけて…………ないな。テーブルの上にはビールの空き缶らしきものが森のように並び、埋め尽くし、床には服が散乱している。ゴミも出していないらしく、キッチンの隅に置いてある。これはさっさと先輩寝かせて退散したほうがよさそうだ。
隣の部屋があったので入ってみるが。お、当たりのようだ。部屋には大きいダブルベッドがあった。彼氏でもいたのだろうか。とりあえず先輩を寝かせる。
「先輩、俺帰りますよ?」
返事がないので帰ってもよさそうだ。ひと段落したので手元の携帯を見てみる。
「まずい、電車がない」
不意に出た言葉、それがいけなかった。
「ならぁ、泊まっていきなさいよぉ」
いつの間にか起きていた先輩が腕を引っ張る。そのまま俺の顔は先輩の豊かな胸に埋もれていた。
「よしよし……」
頭を撫でられ、睡魔が襲ってくる。本当は負けたらまずいのだろうがが疲れもあって睡魔に身を任せた。
「…きて…お…きて…起きて」
光がまぶしいのと家にいるはずなのに先輩の声がする……。
「起きなさいっ!」
ペシンッと頬に痛みが走る。
「なんであんたがいるのよ!」
「なんで……いやセンパイが酔い潰れたから送っていったんですよ……」
目をこすりながら答える。
「っ!」
先輩の赤面する姿がかわいい。
「ごめん、全部思い出した……」
そういえばスーツのまま寝たはずなのに体が軽い……。自分の全身を見てみるとパンツのみ。先輩は下着のみ。これはもしかして……?
「私が脱がせたかもしれない。酔って」
何もないのか……少し残念だな……。
「中村君。このことは誰にも言わないでね、分かった?」
「そうですね、知られたらお互い不利になるでしょうし」
そしてテンプレのように遅刻した。ふたりとも昨日と同じ服装ということで周りは誤解をするのだった。
(おわり)