FTOの揃え方~Bencisco Method~
正8面体パズルのひとつFace Turning Octahedron
縮めてFTO
近年このFTOのスピードキュービングが盛り上がりを見せている一方でスピード解法であるBencisco Methodの日本語解説は乏しい、という状況を改善すべくこの解説記事を作成しました。
FTOを解いてみたいけどまだ揃えられない、という方を対象としています。
速く解くためのTipsみたいなものは、最後に簡単にリンクを紹介してはいますがまた別の記事でまとめようと思います。
※この記事では今後主流になるだろうDianSheng配色で説明します。
「持ち方と回し方」内の動画のFTOはDianSheng配色ではないことは留意ください。
①用語・回転記号・解法の流れ
用語や回転記号、解法の流れに関しては、北村さんのFTOスピード解法に関するメモが簡潔にまとまっているのでぜひ参照ください。
※LanLan配色になっています
あわせてFTOスピード解法に関するメモ作成とその補足にも目を通してください。
また、Twizzle Editorという便利なサイトがあり、そこで使える回転記号も示しておきます。当然ですが、各記号の後ろに ' をつけることで逆になります。
●2層回し(小文字)
u d l r f b bl br
●持ち替え1(回転記号の後ろにv)
Uv Dv Lv Rv Fv Bv BLv BRv
●持ち替え2(中心のコーナーを軸にして時計回りに90度回転)
T
②FTOの性質
配色
FTOはトライアングル、エッジ、コーナーという3種類のパーツからできています。
ここで注意してほしいポイントは、それら3種類のパーツすべてが動く、ということです。つまり、3×3でいうセンターのような固定化されたパーツがありません。
そのため、8面を揃えるには事前に配色をおぼえておく必要があります。
本記事で用いるDianSheng配色は白・緑・灰・橙と黄・赤・青・紫の計8色で構成されています。
●白の周りは半時計回りに赤→青→紫
●白の対面は黄
●赤・青の間に灰
●青・紫の間に橙
●紫・赤の間に緑
とおぼえましょう。
orbitの概念
FTOは8つの面があり、各面がそれぞれ回転します。しかし、8色すべてが混ざり合うことはなく、各面のコーナーで接し合う4つの面同士の色のみが混ざり合うという性質を持っています。
上の説明だといまいち理解できないので、例としてこのスクランブルを見てみましょう(リンクに飛ぶとキューブの裏側も確認できます)。
前述したとおりDianSheng配色は、白・緑・灰・橙の4色と、黄・赤・青・紫の4色、合計8色で構成されます。
上の図(またはリンク先の図)をみると、
●U面・F面・BL面・BR面は白・緑・灰・橙の4色で混ざり合っている
●L面・R面・D面・B面は黄・赤・青・紫の4色で混ざり合っている
ことがわかります。
その混ざり合うことのできる4色の面を総称してorbitと定義します。
このような性質によりエッジは反転せず、コーナーには4つの向きがあるものの実際は2つの向き(goodまたはflip)しか起こり得ません。
そのためある色を探すときは8面すべてを見る必要はなく、揃えたい色のあるorbitのみ確認すればいいわけです。
③持ち方と回し方
基本ホールド(F2TからL2Cまで)
動画のように、1st centerの面(白面)を左向きに持つのが基本のホールドです。U・U'はトリガーを使い、R・R'は右手でつかむようにして回します。
スレッジ・ヘッジ
LBTとL3Tでは、スレッジ・ヘッジという回転を使って揃えていきます。
回しにくければ指使いは変えてもらっても大丈夫です。
スレッジ(S):R' L R L' 逆スレッジ(S'):L R' L' R
ヘッジ(H):R B' R' B 逆ヘッジ(H'):B' R B R'
④1st center
白centerを揃えるパートです。
centerは、基本的には大台形と小台形の2つに分けられます。
トライアングルがエッジ2つに挟まれている方が大台形、エッジがトライアングル2つに挟まれているのが小台形です。自分は最近まで逆だと思っていました
大台形または小台形のどちらから揃えてもいいのですが、配色ミスを避けるためにも慣れないうちは大台形から揃えることをおすすめします。
DianSheng配色は半時計回りに赤→青→紫です。赤と青の関係は3×3と同じなので、はじめはそれを基準に大台形を作ると揃えやすいかもしれません。
後のL2Cでもよく使う小台形の揃え方を3つ紹介します。
これはU・U'を回す面に小台形ができ、持ち替えが少なくなるので使いやすいです。
↓ 2つのトライアングルが離れた位置にある
前半:R U R' Twizzle Editor
後半:R' U R' Twizzle Editor
↓ 2つのトライアングルが近くの位置にある
前半:R U R Twizzle Editor
後半:R' U R Twizzle Editor
↓ トライアングルが2つとも同じ面にある
R U R' U R Twizzle Editor
このステップ(に限らずこの解法のほぼすべてのステップ)は3×3のクロスみたいなもので、手順という手順は基本的に最後のL3T内のCP・2点交換くらいしかありません。なので、揃えては崩してまた揃えて、を繰り返すことで効率の良い揃え方を自力で開拓していくのもこのパズルの面白みなんじゃないでしょうか(投げやり)
⑤F2T(First 2 Triple)
白コーナーを中心にしたトリプルを2つ作るパートです。
Yau Methodのクロスエッジと同様に、トリプルは3つすべては作らず一か所だけ空けておきます。
このF2Tステップでは白centerを左向きにする基本ホールドでキューブを持ちます。そして白centerが崩れない回転(U・U'、R・R'、r・r')とRv・Rv'持ち替えを使って揃えていきます。
揃える自由度がとても高いので、はじめは苦労するかもしれません。
繰り返し反復して、FTO独特の動きを把握しましょう。
YouTubeの速い方のソルブ解説動画も非常に参考になります。
⑥2nd center
2つ目のcenter(緑)を揃えるパートです。
揃えるcenterの色は固定にしたほうが配色ミスを減らせます。本記事ではTwizzle Editorの仕様もあり、緑centerから揃えていきます。
これも1st centerと同様、大台形を作ってから小台形を作る、という揃え方がやりやすいと思います。
小台形の作り方は1st centerで簡単にまとめていますので、適宜さかのぼって確認してください。
また、使う回転はF2Tを揃えたことにより制限されます。繰り返しになりますがU・U'、R・R'、r・r'の回転のみを使って揃えていきます。
ここも配色に注意して揃えましょう。
緑centerを正面に見て、反時計回りに黄→赤→紫です。
前述のとおりcenterを揃える色の順番は固定でいきますが、はじめに揃える大台形はどの2色からでも揃えられるようにするのがベストです。
分かりやすいのは赤ー紫の大台形ですが、紫ー黄や黄ー赤の大台形からもcenterを作れるよう、配色はしっかりおぼえましょう。
また赤―紫の大台形以外から揃え始めた場合、2nd center終了後は黄エッジが右向きにくるようAUFしましょう。
⑦L2C(last 2 Center)
側面の残り2つのcenter(橙・灰)を揃えるパートです。
基本ホールドは維持したまま橙面をU面にするとF面は灰面となり、揃えたい橙・灰の2面が見えます。
まずは配色をチェックしましょう。
橙色か灰色のどちらかのcenterを揃えればもう片方のcenterも揃います。
橙面から揃えるかそれとも灰面から揃えるかは人によりますが、自分はU面に当たる面(ここでは橙面)から揃えているので説明も橙面でいきます。
ここも例にならって大台形から作ります。
大台形の作り方を詳しくは述べませんが、
R U R' R U' R'
r R' U R r' r R' U' R' r'
の回転にU・U'を途中で回すことで、2nd centerを崩すことなくL2Cを揃えることができます。
また、L2Cでは下の画像のパターン
大台形 キツネ 天使 パックマン center
も大台形が揃っていると見なします。
U面に大台形がある(上図のいずれかである)場合、F面は下図の
三角形 ヒラメ カレイ スヌーピー 小台形 チョウ center
のいずれかになっています。
これらのU面・F面のパターンに対応する手順をまとめました(少し下のPDF)。
L2C全パターンではなく大台形が揃った場合のみに絞って載せています。
図の見方ですが、このイラストのように橙centerをU面、灰centerをF面にして持ったときの回転記号が書かれています。
図中の黒いバーはエッジの側面を示しています。この黒いバー同士の配色が正しい場合は配色○の、正しくない配色の場合は配色×の手順を回してください。
上のPDFにも載っていますが、もしcenterの配色を間違えてしまった場合は、配色を間違えたcenterをU面とF面にしてこの手順を回しましょう。
R U' R' U r U R' U' R (U r' U') Twizzle Editor
もし次のLBTステップ終了後にcenterの配色ミスに気付いた場合、上の手順の最後を
R U' R' U r U R' U' R U r' U F' U F
と回すと、この手順を回し終えてもLBTのトリプルは保存されます。
centerを揃えたらこれも2nd centerと同様、エッジの黄色が右向きになるように橙center・灰centerともにAUFしましょう。
おまけ
L2Cで起こり得る全パターンを橙トライアングルと橙エッジの個数で分類しました。
作成したはいいものの少し分かりにくいので、ロールシャッハ・テストにでも使ってください笑
⑧LBT(Last Bottom Triple)
このLBTパートではF2Tで揃えなかった残りの白トリプルを揃えます。
さきほどのL2Cまでは白面を左向きに持つ基本ホールドでしたが、このLBTからは黄面をU面にします。
このパートから多用するのがスレッジ・ヘッジです。
スレッジ(S):R' L R L' 逆スレッジ(S'):L R' L' R
ヘッジ(H):R B' R' B 逆ヘッジ(H'):B' R B R'
スレッジ・ヘッジを回すと、1手目で動いた2つのトリプルが反転します。トリプルを反転させながらU・U'を回し、コーナーとトライアングルを合わせていくのがこのパートです。
例として、この動画を見てください。Twizzle Editorはこちら。
手前に白コーナーがあります。
まず赤から揃えていきます。
Uv'持ち替えをすると右奥に白コーナー、U面左奥に赤トライアングルが来ます。白コーナーの赤は下向き・赤トライアングルはU面にあって、このままではU・U'をしても赤は揃いません。白コーナーを反転させずに赤トライアングルだけ反転させたいです。そこで逆スレッジを回しました。
L R' L' R
逆スレッジを回すことで、白コーナーの赤は下向きのまま、赤トライアングルが側面に移動しました。これで
U'
を回して赤が揃います。
次に紫です。白コーナーは正面、紫トライアングルは左奥にあります。白コーナーの紫は上向き・紫トライアングルはU面にあるので、両方とも反転させる必要があります。そこでもう1回逆スレッジを回してみます。
L R' L' R
白コーナーと紫トライアングルがともに反転しました。最後に
U
をして、トリプルが揃います。
以上をまとめるとこうなります。
Uv' L R' L' R U' L R' L' R U
もし揃えたいパーツ(白コーナーやトライアングル)が下にあった場合 ↓ は、動かしたいパーツのあるトリプルを左下に持ってきて
L' R' L R
を回すとそのパーツがU面に移動します。
トリプルを揃えたら、下の空いてる場所に揃えたトリプルを入れましょう。
入れ方はトリプルの白の向きによって2パターンあります。
白トリプルと下の空きトリプルの位置はD・D'で調整してください(調整した後はADF)。
スレッジ・ヘッジで反転させて揃えるというイメージははじめはとても難しく感じると思います。次のL3Tも基本的に同じ考え方で揃えていくのですが、慣れないうちはこのLBT以上に難しいので、パターンに当てはめて回せるようにまとめました。
⑨L3T(Last 3 Triple)
Bencisco Methodの個人的最大の山場です。
コーナーの黄色と黄トライアングルを合わせることがこのパートの目標です。
このパートも黄面をU面にして持ち、スレッジ・ヘッジとU・U'を使って揃えていきます。
下にL3Tの全パターンを樹形図にまとめました。
U面色の黄色と、側面色(赤・青・紫)をまとめた桃色で示しています。
各パターンの判断基準は
・U面の桃トライアングルの数
・コーナーflipの有無
・側面のトライアングルの位置
などを確認してください。
※注意
樹形図の左下にあるこのパターンを点線で囲っているのは、黄色面は揃っているもののトリプルはぐちゃぐちゃ(例:Twizzle Editor)という場合が存在するからです。
・側面トライアングルは揃っていないがコーナーは揃っている
・コーナーは揃っていないが側面トライアングルは揃っている
この2パターンのいずれかであればヘッジ(H)は回さなくて大丈夫です。
この場合、CPまたは2点交換のどちらかになっていると思います。少し下までスクロールするとそれぞれの手順を動画にまとめているので、パターンに合った手順を回して8面完成です(つまりコーナー・側面トライアングルのどちらかが揃っていればOK)。
そうでない(コーナ・トライアングルともに揃っていない)場合は、図にあるようにH(R B' R' B)を回してください。
一つ上で述べた一部の例外を除けば、すべてこの画像 ↑ のパターンに終着します。
ここで、トリプルの桃色の状態によってevenとoddの2パターンに分けます。evenとはトライアングルが3点交換で揃う場合であり、oddは2点交換になる場合です。
判別方法は、
even
トリプル3つとも色が合っている or トリプル3つとも色が合ってない
odd
トリプルのどれか1つの色があっており、他2つは合っていない
となります。下の例を参考にしてください。
①トリプル3つとも色が合っている → even
②トリプル3つとも色が合ってない → even
③赤色のトリプルは合っているが他2つは合っていない → odd
④紫色のトリプルは合っているが他2つは合っていない → odd
※以降はevenとoddで分岐します。
even
下画像の向きに持ち替え、藍色のトライアングルの色と、フリップしたトリプルの側面の色に注目してください。
色の関係は3パターンあります。
下図に当てはまるスレッジ・ヘッジを回してください。
これで黄面が揃いました。
次はコーナーです。
揃っていればラッキーです。8面完成おめでとうございます!
揃っていなければ、CP手順を回しましょう。時計回りと半時計回りで2種類のCPがあります。
CP1(時計回り)
F' D F' U' F D' F' U F'
Twizzle Editor
CP2(反時計回り)
F U' F D F' U F D' F
Twizzle Editor
余談
コーナーの3点交換が起こっているように見えますが、コーナーと一緒にコーナーに接する黄トライアングルも移動しています。このことは、Rex Cubeでこの手順を回してみるとよくわかります。
odd
下画像のように持ち替えて、フリップしたコーナーの側面(図の藍色の部分)の色を確認してください。
藍色の部分は下の3パターンに分けられます。それぞれの手順を回せば、黄面が完成します。
黄面は揃いましたが、側面のトライアングルは2か所が交換されている状態になっています(oddは必ずそうなります)。
なので、最後に2点交換の手順を回しましょう。
2点交換
r U R' U' M U R U' R'
Twizzle Editor
※Twizzle Editorが中層回転に対応していない?ので、動画のMの回し方が変になっています。OLL28 ↓ と同じ手順なので、動画(特に中層の回し方など)は参考程度にしてOLL28と同じように回してください。
余談
こちらも、見かけ上紫と青の2つのトライアングルが交換されているように見えますが、上の動画の場合、2つの紫トライアングルと1つの青トライアングルの3点交換になっています。中層回転がインターチェンジとなっているコミュテータであることに気付ければ、トライアングルの交換手順は色々作れます。
⑩リンク集
最後に動画・資料のリンクをまとめます。
理解できなかった、またはもっと速くなりたい、という方は以下に目を通してください。
Bencisco Methodを考えたBenpuzzlesさんの解説動画です。英語が多少わかる方ならこの動画が一番わかりやすいと思います。
再生リストになっており、各ステップごとに解説されています。理解できなかったステップに関してはこちらの動画を参照してください。
Ben’s Face-Turning Octahedron (FTO) Speed Solution (Bencisco Method)
上の動画の内容を文字で解説したBenさん作成の記事(英語)です。
動画より文字のほうが理解しやすい、という方はこちらをお読みください。
OLP手順表
本記事のL3Tステップを1lookで揃えるための手順がまとめられています。
手順としておぼえなくてもL3Tは揃えられますが、このOLP手順をおぼえれば途中の判断が無くせる分速くなると思います。
TCP手順表
Edd Dibleyさんが作成した英語記事に北村さんが和訳を付けたものです。
TCP手順をおぼえる際は、まずはこれを見るのが良いと思います。
Tipster TricksterさんのTCP手順をまとめた動画です。
自分はこの動画からTCP手順を学びました。
手順自体は上で紹介したTCP手順表のものと同じでした。
(回しやすいFTOを手に入れたら指使いも参考にしたい…)
L3T手順表(Aedan)
Aedan Bryantさんが作成したL3Tの手順表です。
一部空欄ですが様々なパターンの手順が網羅的にまとまっているので、もっともっと手順をおぼえたい、という方はこれを見るのがおすすめです。
L3T手順表(Nathan)
Nathan Sachlebenさんが作成したL3Tの手順表です。
自分もあまりチェックできていませんが、内容自体は上のAedanさんのものと大差ないと思います。
以上大変長くなりました…。
誤植や回転記号の間違い、質問などありましたらX(旧Twitter)の@Squate_1まで連絡ください。
この記事を読んでFTOを揃えられる人が増えることを願っています。