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お嬢様は高級フレンチよりも二郎系ラーメンがお好き

『ご馳走様でした…』

「お嬢様、まだ料理が残っておりますが…」

『だって…美味しくないんだもん!下げて!』

「かしこまりました…」

そう言ってお嬢様のお皿をお下げします。あーあ、もったいない…せっかく最高級のフレンチ料理をご用意したのに…

最近の悩みは、お嬢様がお食事を残すこと。
せっかく皆様が料理を作っていらっしゃるのに…

そんなことを思いながら厨房までお皿を持っていく。あーシェフに申し訳ない…

山下家の跡継ぎにふさわしいようにとご主人様から頼まれたのに…執事失格です…

そんなことを思いながら、夜食用のカップ麺を開ける。執事たるもの、食事は手早く取らなくてはならないのです。

お湯を注ぎ、3分待ちます。

どこからか視線が…

ゆっくり振り向くと、

『ジーッ』

お嬢様に見られておりました。

「お嬢様、何が御用ですか?」

『カップ麺…いいな…』

「…よければお食べになります?」

『いいの!?』

「まだ買いだめしてありますので。」

『やったっ…えへっ///』

お嬢様は喜びながら入ってきました。カップ麺がそんなに嬉しいんでしょうか?

タイマーが3分経ったことを告げると、お嬢様は蓋をとって食べ始めます。

『んー!おいひいっ!!!』

今まで見た事ないようなお顔でカップ麺をすすっています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『ご馳走様でした!』

「このことは内緒ですよ?」

『わかってるよ笑』

まあ、たまにはこういうのもいいですかね…

『ねえ、今度付き合って欲しいんだけど?』

突然の言葉に思わず啜っていた麺が出そうになりました。

「それって…どういう意味ですか?」

『今度さ、二郎系ラーメン食べに行きたいなぁ…』

「じ、二郎系ラーメンですか…」

お噂はかねがね…山のように盛られた野菜にこってり背脂、分厚いチャーシューに太いちぢれ麺…

しかし!お嬢様の頼みを断るのは執事として有るまじき行為!

「わかりました、行きましょうか。」

『やった!じゃあ約束ね?』

このようなことがバレたらご主人様はさぞお怒りに…
でも、お嬢様の頼みなら…

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数日後

裏門からこっそりと出て行き、下調べした話題の行列店に向かいます。

怪しまれないように、お嬢様の考えた設定として兄妹ということに。流石ですお嬢様、リスク管理が徹底しております。

時刻はお昼前。店に着くとサラリーマンの方々がもう並んでいます。
そんな中に私服姿の若い男女が2人、周りの視線はお冷より冷ややかです。

店員「2名様、どうぞ〜」

店内には独特の雰囲気が…

皆さん目の前のラーメンと真剣に向き合っています。
雰囲気に圧倒されながら、とりあえず食券を買います。

ま、マシ?マシマシ?カタメ?
ハリーポッターファンの私でも分からない呪文が並んでおります。

するとお嬢様はテキパキと食券を買っていきます。
なんと!お嬢様はこれらの意味を理解しておられるのですか!流石でございます!

『早く買わないと、後ろ詰まるわよ?』

「は、はい!」

とりあえずお嬢様と同じものを頼みます。

待つこと10分…

店員「お待ち!」

目の前にやってきたのは、テレビで見たあのラーメンでした。
初心者なので少なめにしたはずなのに、ボリューム満点です。

『いただきます。』

お嬢様、髪を一つ結びにして戦闘モードに入ります。さながらスーパーサイヤ人に変化した悟空…

「いただきます…」

いざ、未開の地へ!

ズルッ…ズルズルッ…

び、びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛

心の中のマスオさんが思わず叫んでしまうほど!

野菜を崩しつつラーメンを責めていきます。

そして隣のお嬢様、食べ方がお美しい…

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『美味しかった〜』

「作用でございますね。」

ちょっとお腹が膨れてますが、お嬢様の笑顔を見れれば満足です。

『また今度どっか行こ?』

「皆さまには内緒ですよ?」

『わかってるって笑今度は回転寿司に行きたいなぁ?』

「わかりました、行きましょうか。」

『約束だよ?回転寿司って、席に蛇口が着いているんでしょ?あれで手洗ってみたいなぁ〜』

お嬢様…その使い方をしたら私は問答無用でクビになってしまいます。

おわり

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