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エッセイ「怒るでぇ、しかし」

 去年、かねてからの念願だった、北海道の三毛別羆事件跡地に行って手を合わせることができた。

 ところが、拍子抜けがするほど、五感+αで感じるものがなかったのである。

 悲惨な事件の現場には、必ず、良からぬ気配が残っているはずなのに、それを一切感じない。

 私の感性、知らぬ間にヤキが回ったのか……。

 そこで私は、100年の歳月と、慰霊碑が効いたゆえに、邪気が蒸発したのかな? と解釈していたのだが、あらためて資料を読み直していて愕然とした。

 そこには次のように書かれていたのである。

《……事件が起こった六線沢には、町民の手によって当時の情景が再現された「三毛別羆事件復元現地」がある。

 うっそうと木々が茂る一角に、当時の生活を再現した家屋の復元、事件を解説する看板、犠牲者の慰霊碑、そして民家に襲いかかろうとするヒグマの像がある。

場所は国道239号古丹別交差点から北海道道1049号苫前小平線を南に入り約16km。

【 ちなみに実際に事件が発生した場所とは数百m離れている】。…》

 なんやねん? それ?

 わざわざ遠方から現地まで来た人間に対する、詐欺やんけ!

 怒るで、しかし。

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