怖いもの
昭和35年生まれの私たちの世代の人間が、子供の頃一番怖かったのは、地震でも雷でも火事でもオヤジでもなく、ウルトラQに出てきたケムール人(星人)でした。
その声と走り方に、トラウマになるほどの恐怖感を抱いたことを今でも鮮烈に覚えています……というか……ずっと忘れていたのに、今朝見た夢で思い出したのです。冷凍されていた記憶が1500Wの業務用電子レンジで一瞬で解凍されてしまいました。
夢の舞台は昼下がりのキャンプ場。
林の向こうの歩道を、体長2メートルほどの真っ黒な熊が、二足歩行で「ホッホッ!」と息を吐きながら走っているのを目撃したのです。
私はとっさに反対の方向に逃げだしましたが、前方から人の叫び声が次々と聞こえてきました。
逃げる私がふと振り返ると、熊は前方でUターンして、今度は私と同じ方向に向かって走っているではありませんか?
私は、墓石か石碑か…そんなものが乱立している区域で、その石のかげからかげへ逃げるのですが、なんと、恐怖で腰が抜けて力が入らなくなり、めちゃくちゃ焦りまくるのですが、どうしようもなく……
「ああ俺の人生はここで果てるのか? まさか熊に喰われる最期だったとは」
……などと嘆くのですが、なぜか熊は他に気をとられて、私は九死に一生を得たのでした。
還暦を超え、山口市のような性格温厚、治安良好、極道不在の地に棲みつき、怖いものがない事が最も怖いと自己反省していた私の自惚れが、一気に吹っ飛んだ朝でした。
怖いものがないというのは、ホントに愚かな思い込みでしかないのです。
今朝も引き続き、外は雪景色。
きっと熊は山の中で冬眠しているでしょうが、ケムール人にはそんなの関係ありません。
今夜あなたの町に、闇の中に光る2つの目を見つけたら、悪いことは言いませんから、躊躇せずその場から逃げてください。
ケムール人…足……めっちゃ速いです。
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