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エッセイ 懺悔

 懺悔します。 
 若気の至りというやつです。

 赤いチャンチャンコを着る歳になった今は、すっかり快心して、良い子になっていますから、ご心配なく。

 昔、スーパーに買い物に行った時、夫婦連れの旦那の方が、特売の餃子を手にして、カゴにいれようとしました。

 すると妻らしき人が、横からそれをとりあげ、裏面の表示を確かめ、小声で何か夫にささやいて、買わずに元に戻しました。

 その様子を不審そうに、少し離れた場所にいた店長らしき人が見ていました。 

 直後、私もそのギョウザを手にし、裏の表示をみて気付きました。「中国産」だったのです。 

 私は大きな声で、

「わっ、ババッチッ(汚なっ)、メタミドホスはいってるんとちゃうか? ほんでまたつくった奴ら、そんなん知らんゆうて嘘つくで」と言うなり、捨てる様にそれを戻しました。 

 隣に居た者が「やめなさい! 恥ずかしい!」と私を必死に制止しました。 

 けれどもこれで、店長らしき人は、消費者の正直な心と、メタミドホスの恐ろしさと、中共産の食品を売るリスクが理解できたはずです。

 懺悔します。 
 20年ほども前のことです。

 親戚が加入していた郵便保険かなんかの満期で、和歌山へのバス旅行がありました。なぜか私もそれに同行したのです。

 途中、紀州梅の大きな農場を見学しました。  そこでは、社長が自慢たらたらと講釈を垂れました。その社長の人相があまりに悪かったので、私はすこぶる不快でした。
 性格の悪さが顔に滲み出ていたのです。

 まあ、そんな社長ですから、どんな会社か想像はつきます。現に、元気なのは社長だけで、他の社員は目が死んでいました。

 社長は声を大にして

「うちの梅は、合成保存料を一切使っていないというのが、一番の特長です」

 と言いました。 

 それを聞いてたのか聞いてないのか聞き慣れてるのか……社員らが、
「やってられんわ」という顔をしていました。

 違和感を感じた私が、ふと倉庫の外壁を見てみると、そこに大量の一斗缶が積み上げられています。
 まだ老眼になっていなかった私は小さなラベルの文字をすぐに読みました。それはまさしく、「合成保存料」だったのです。
 しかも、1缶や2缶ではありません。
 壁一面に、ピラミッドのように積み上げてあるのです。 

 私は社長に「おっさんちょっと、これ何かな?」と言おうと思いましたが、おっさんの話を聞いて幸せそうな顔をしているたくさんのお年寄りの顔を見て、たじろぎました。
 ここでせっかくの旅の雰囲気を壊してしまうと、この後も同じバスの中で肩身が狭くなります。 

 それでも、このまま黙っているのは、人類の尊厳にかかわります。

 そこで帰り際、そばを通りがかった社員の袖をひき、

「あんまりなめたことをしたらあかんで、この一斗缶は、いったいなんじゃい。あとできっちりしかるべきところでカタつけたるさかいに、首洗ろて待っとれと、社長に言うとけ!」と言いました。

 するとその社員は、顔をひきつらせて、逃げていきました。 

 さて、そのあとみんながゾロゾロとバスに乗り込みます。 

 私はほとんど最後部に並んでいました。 

 そこにさっき講釈していた人相の悪い社長が走り寄ってきて、私を見つけると満面の笑顔で、

「お客様、申し訳ございません、お忘れ物です」と言って、木箱いりの、いかにも高価そうな梅を私に手渡しました。 

 天の邪鬼な私は少しもひるまず、ニタニタと「お主もワルよのう」などと越後屋の真似もせず、一切表情を変えずに、こう念を押しました。

「合成保存料は、はいってないやろな?」

 正直に懺悔しました。 

 繰り返しますが、これらはすべて若気の至りです。
 私のせいでもありますが、育った環境が大きく影響しています。

 余談ですが。

 餃子騒動で、最初日本のせいにしていた中共が、あとになって工場の元従業員を逮捕した時、当時の宇宙人…鳩山由紀夫首相は、

「中国側関係者の努力を評価し……本件が早期に解決し、日中関係がさらに発展することを期待する」とのコメントを発表しました。

 さらに、当時のフランケンシュタイン…岡田克也外相は、

「中国当局の大変な努力の結果、ここまでこぎ着けていただいた」と感謝を述べました。

 けど……そんなに中共、偉いか?

 輸出国として、当たり前のことをしただけやと思いますが、まあ、さすがですね、民主党。今のあべちゃんと、丙丁つけがたい……これを昔の人は、目糞鼻くそと呼んだのでしょうな。

 なんまいだ、なんまいだ。

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