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消えた20年

 関学高等部の同級生で、在学中も卒業後の4年間も、そんなに深い付き合いがなかったのですが、20歳頃からなんかやたらと遊びだした……まあいわゆる、悪友がおります。
 いや……一度、席が隣りどうしになったことがありましたね……。

 この男、柔道部にも属していたことがあり、やたらと腕っぷしが強く、喧嘩上等の筋肉質と気の強さが自慢ですが、なぜかやたらと勉強が出来ました。いわゆる、インテリヤクザという資質です。

 それが、成人後、何のきっかけもトラブルもないまま、なんとなく付き合いが疎遠になり、神戸の震災後くらいからおよそ20年以上の月日が流れました。
 だから携帯の番号も、現住所も、今や私は知りません。

 ただ、大学卒業後、一部上場の企業に無事就職したのは知っていました。もちろんすぐに上司をしばいて首になると信じて疑いませんでしたが……結婚披露宴にも呼ばれて行った記憶があります。

 その男が、先日(2019年2月)の恩師の偲ぶ会で再開したとたん、寸分も昔と変わらない口調、トーン、テンション、温度と湿度で、

「おおっ! クボやないか……」と、近づいて来て、

「オマエ今、山口におるらしいな? それを聞いて、いっぺん山口に遊びに行こうと思うてたんや、山口のどこや? 市内か?」

 私はせっかく懐かしさを噛み締めようとしていたのに、とっさにこう叫びました。


「待てい! オマエと俺の20年の空白は、いったいどこへ行ったんや?」

「そんな難しいこと言うなや、オマエは頭悪いんやから、そんなこと考えてたら今晩、熱でるぞ」

「まあ、山口に来たら、ラジオでもだしたるわ」

「そやな……よそでは言えん『人事のオモロイ話』を、ベラベラしゃべったろか? もうすぐ定年やし、俺に文句言えるような根性ある奴、サラリーマンにはおれへんから、今となればヤバイことなんでも言えるぞ」

 ちなみにこの男、先にも述べた、某一部上場企業の、『人事総務部長』だというから、一流企業のセキュリティの甘さというか……この国の出世のシステムがまったく私には理解できません。

 いや〜参りました。

 私よりアホが、昔のまま絶滅せずに残っていたことに対し、神に感謝です。

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