クリープをいれない珈琲
「口が悪くない、久保せんせなんて、クリープを入れない珈琲ですよ」
「それでええやん。わし、クリープなんかいれへんで、珈琲はブラックやもん、できたらマンデリン」
「なら、毒舌を吐かない久保せんせなんて、ワサビの効いてない、お寿司ですよ」
「わからんでもないけど、なんか、説得力に欠けるなあ、スパッとしたキレがないなあ、そのたとえ」
「それなら、飛び切りわかりやすい、そのものズバリのたとえを、言いましょう」
「おう、言うてみいや」
「他人をけなさない、久保せんせなんて、ナマコの獲れない、日本海みたいなもんですよ」
「そらあかんやないかい! そんなもん、絶対に許せんがな、神が許しても、仙人のこのわしが許さんで、ナマコを取り上げてどないすんねん。こうなったら、ハルマゲドン、全面戦争じゃ! ウリャ!」
「まあまあ、落ちついてください。戦争は駄目です。なにか適当に、毒を吐いてもらえたら、今日のところはそれでけっこうですから」
「ほんなら、言おか…ホンマはな、これは言いとうなかったんや、また、友達一気に、減るさかいにな…」
「それは、いったい、何でしょう?」
「よさこいな……特にあの、後ろでマイク持って、いきって怒鳴るおっさんな、あれ、わし、めっちゃ嫌いやねん。
やめてほしいねん。
ぜんぜん、かっこようないよ。
日本的でもないし、
伝統性も見えへんし、
音楽、最悪やし、
単に、原宿のタケノコ族やん?
喜んでるのん、自分らだけなん、まったくわかってないやん。
マナーも決してええとは言えんし……
発祥の北海道でも、ひんしゅくこきまくってるそうやん?
だいたいやなあ、自己満足のオナニーはな、自分の部屋でひとりでこっそりやってほしいねん。人前で、しかも大勢でするなっちゅうねん。
みんな世間は大人やから言わへんだけで、心の中では、めっちゃ怒ってるんやで…」
「まあまあまあまあ、冷静に、お気持ちは、わかりますが、本人たちは、あれがええと思って、一生懸命頑張ってるわけで、あれはあれで、連帯感を共有して、それなりの青春を謳歌してるわけで、幸せなわけで、暴走族よりは、害も少ないですし、安全ですし、まあ、まあ、まあ、まあ、この話は、聞かなかったことにしておきますので……」
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