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大人の寺子屋 サイゴン陥落

 お隣の国から、日本人は正しい歴史認識をしろ! と、よく言われます。

 それを、
「お前とこはどないやねん!」と、はねつけるのは簡単ですが、昔から、人のフリみて我がフリなおせ、ということわざもございます。

 冷静に振り返れば、たしかに、占領軍の都合で教育された我々の世代は、特に近代史を、ほとんど学んでいません。
 というか、私のまわりの素人(専門の学者でない)さんのほとんどが、非常に基礎的な史実を、知らないことが多々あります。
 
 それは、まさしく、平和の恩恵の一部でしょう。
 あえて、平和呆けとは、私は言いません。   
 だって、たしかに、我々、1960年以降に生まれた日本人は、ベトナム戦争などより、もっと、おいしく楽しく興味深いことがたくさんあったのですから……。

 かといって、やはり、歴史を知ることは大切です。

 ことあるごとに、こうして、ちょっとした切り口の一面でも、みんなで学び、復習することは、大切だと思うのであります。

 読んで、まったく知らんかった……という人は、要注意ですぞ。そういう人は、歴史要介護3 ですぞ。

【世界史のお勉強】
 元ネタは昔のドキュメンタリー。

 1975年4月30日、北ベトナムの戦車部隊がSaigon の大統領官邸に突入し、ベトナム民主共和国の劇的な勝利で、ベトナム戦争は終結しました。私が中学3年の時です。

 ベトナム戦争は、戦場の生々しい映像がテレビで伝えられた初めての戦争でした。

 アメリカの人々は、茶の間でベトナムでの戦闘を、ほとんどその日のうちに見ることができたのです。

 そのため、ベトナムの現実は、アメリカ社会を揺さぶり、変貌させることになります。

 膨大な戦費の支出は、アメリカ経済を圧迫し、戦争の是非で国内は大きく分裂し、既存の体制への抵抗は、様々な価値観の崩壊につながりました。
 アメリカという超大国の地位が、ベトナム戦争によって、大きく揺らいだのでした。

 ケネディが大統領に就任した1960年代初めのアメリカは、超大国としての自信に満ちていました。
 ケネディーは、平和への理想を高く掲げます。

「どのような平和を我々は求めているのか? アメリカの武力で世界に強制する平和ではなく、私が言いたいのは、真の平和である。
 それは、生きがいのある生活を保証し、子孫によりよい生活を約束する平和である。
 アメリカ人のための平和ではなく全人類の永遠の平和である」

 けれども、アメリカは、ケネディの理想とは裏腹に、厳しい現実に直面します。

 アメリカがアジアで直面した最大の問題は、べトナム情勢の悪化でした。

 社会主義化を進める北ベトナムに対して、南では、ゴ・ディン・ジェム 大統領のサイゴン政権が、アメリカから強力な援助を受けていました。

 南ベトナムは、社会主義の拡大を防ぐ防波堤の役割を期待されていたのです。

 しかし南ベトナムは、政情が不安定でした。
 
 大統領の弟、ゴ・ディン・ニュー夫妻は、秘密警察を使って反政府勢力を弾圧します。

 一方北ベトナムでは、ホー・チ・ミンが率いるベトナム労働党が、南ベトナムをアメリカの帝国主義から解放すると言うスローガンをかかげます。

 1960年には、南ベトナム領内に民族解放戦線が結成されました。

 そして1963年1月の戦いで、装備の面で圧倒的に劣る解放戦線が、アメリカの近代兵器で武装したサイゴン政府軍に大打撃を与えました。

 同時にこの年は、サイゴン政権の独裁政治に対して激しい抵抗運動が起こった年でもあります。

 運動の中心を担ったのは仏教徒でした。

 カトリック教徒の、ゴ・ディン・ジェムがひきいるいるサイゴン政権から、仏教徒は激しい弾圧を受けていたのです。

 ある僧侶が焼身自殺を遂げました。
 その後も、仏教徒の死の抗議が相次ぎました。
 焼身自殺は事前に予告され、公開の場で行われました。

 こうした映像は、南ベトナム情勢の悪化を世界に伝えることとなり、アメリカの政策に対する批判が、世界中で一気に高まることになります。

 ゴ・ディン・ニュー 夫人のインタビュー

「仏教徒が何をしました? 彼らがやっている事と言えば、僧侶のひとりをバーベキューにしただけ…あの僧侶は、そそのかされて陶酔状態だったのよ…あのバーベキューも矛盾しているわ、反米運動なのに、アメリカ製のガソリンを使うなんて…」

 1963年11月1日、サイゴンで反政府軍によるクーデターが発生します。

 サイゴン政権に愛想をつかしたアメリカの、黙認の下で強行されたのでした。

 大統領と弟の ニュー は殺され、軍部の臨時政府が樹立されました。

 ケネディは、新政権を強化することによって、3年以内にベトナムから手をひく決意でした……。

 ところが、その先は、さらに泥沼……。

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