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チャート12は落合専用

 言葉…特に外国語の発音ってなもんは、ホンマに難しいと思います。
 流暢な英語を操る友人もたくさん居ますが、ホンマのネイティブには、どう聞こえているのか、はなはだ疑問です。
 だいたい、日本みたいな狭い国でも、地方によって、相当イントネーションが違うんですから、広大なアメリカ大陸やイギリスやそのあたり…そらイギリスでも、ロンドンよりマンチェスターやリバプールの方が、きっと言葉が荒いはずです。
 それを痛感したのは、昨夜神戸で、関学の中学部から一緒の、サッカー部やった男と飯を食ったからです。
 この男の名は、落合晋治。元はええとこのボンやったはずです。神戸の山手の。
 中学1年の時の英語のテキストの「チャート12」が猿の絵で、その絵の顔、特に口の形が落合そっくりだったので、すぐに彼は「猿」と呼ばれるようになりました。
 気を使う人は「おさる」と呼ぶし、口が悪い友人は「エテコ」と呼びます。
 ネイティブの関西人どうしの場合は、具体的には、こんなふうに使います。
「ところで、アイツは、どないしてんねん?」
「アイツって、誰やねん?」
「アイツゆうたら、アイツやないかい、あの、サッカー部の、背えの高いやつ」
「わからん、背え高いやつぎょうさんおったやんけ」
「そうや、そうや、猿や猿」
「なんや、エテコの落合かえ、アイツは、元気にしとるよ」
 と、こんな感じになります。
 
 さて、その落合晋治。
 私も、まあどちらかというと口が悪い方ですが、それよりもさらに、何階かエスカレーターでフロアをあがったくらいに口が悪いのです。  
 特にその言い方、イントネーション、強弱、アクセント、息の出し引き……。
 これは、なかなか、文字で伝えるのが難しいのですが、
「おい久保、オマエ、山口ゆうたら、フグとちゃうんかえ」
「そらそうやけど、あんなもん食うの、観光客だけやで、地元の人間は、もっと安うてうまい魚くうよ」
「アホぬかせ、そんなことは聞いてへん! フグやフグ、ワシはフグがくいたいんや」
「うるさいやつやなあ、しゃあない、ほんなら山口来いや、湯田温泉で食わしたるわ」
「ヤカマシイ! ほんなもん、わざわざ山口くんだりまで行けるかえ、仕事あるやないか仕事が…そやからさっさと送らんかい、クール宅急便で、ココの家に…ほんなら、鍋食えるやんけ、アレ、フグは何やった? そうや、てっちりや」
 こんなのは、まだ聞き取れるのですが、
「おい久保、オマエいま、ど○○○し(す)○○○○○○○?
 微妙にわからんのです。
「どこに住んでるねん?」なのか、
「どんな仕事してるねん?」なのか、
「どないしてるねんよめはん?」なのか、その判別が、ヒヤリングで判断できないのです。
 生粋の関西人である私が聞き取れない発音を、山口や関東の人がわかるはずがありません。まして、外国人なら余計です。
 そういう事実を鑑みると、
 言葉……特に外国語の発音ってなもんは、ホンマに難しいと思います。

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