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エッセイ スワンボート

「私には夢がある。それは、いつの日か、この国が立ち上がり、すべての人間は平等に……」
 いや、これはキング牧師の演説であって、私のではない。

「私には夢がある。それは、毎朝小鳥のさえずりで目覚める家で暮らすこと。」
→ 実現済み

「私には夢がある。それは、作家として、最期の日まで、生きながらえること。」
→ かなりええとこまで来てる。

「私には夢がある。自分が所有するスワンボートで、中秋の名月を湖上に映しながら、自分が作った弁当を食うこと。」
→ これが、見えない。

※ それが叶わぬ場合。

「人が死ぬ時の一念によって、その人の後世が決まると言うが、今そなたは何を願うか。」

 と、楠木正成…いや……死神が質問すると、久保研二は大声で笑いながら、

「七度まで人間に生れ出て、作家になって、田舎に住んで、庭の池にスワンボートを浮かべます」と、答えるそうである。

 めっちゃ具体的で、わかりやすい。

 ああこれが、私の一貫した価値観で匍匐前進する、渋い人生なのだよ。合掌。

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