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パワーウインドウ

 10年前までセンチュリーに乗ってた私が、日曜日にわざわざ加古川まで取りに行って、山口まで持って帰った車は、なんと、軽どころか、今度は4ナンバー…つまり軽貨物……HONDA アクティです。

 年式…13年落ち…車検は受けたとこやから丸2年。

「せんせ、走行16万キロ超えてるけど、この前エンジン積み替えたとこやから、新車みたいなもんやで」

「なんでもええよ、どうせ下駄みたいなもんやから、2年持ってくれたら、次は新車でN-VAN 買うわ」

「今、中古車市場…普通車より軽の方が値がついて、さらに軽でも、貨物…4ナンバーの方が高う売れるねんで、ホンマはせんせに渡さんと、よそに売りたかってんけどなぁ……」

 
 とりあえず昼飯を奢り、行きは新幹線、帰りは片道400キロ、山陽道で無事山口まで帰りつき、昨日の朝、さっそく山口の陸運局に行き、代書屋(行政書士)のドアを開けて、
「軽貨物、名変、移転、姫路から山口…」
 と伝えると、奥から若い社長さんが、

「お久しぶりです」

「なんで覚えてるねん? ワシここくるのん、7年ぶりくらいやで」

「そら、いちおうサービス業ですから」

 その後無事に山口ナンバーになり、今日、たまたま後部座席…ベンチシート…に、25歳のギャル2名を乗せて、ハーレム家族風呂気分で運転していると、

「クボさん、この取手みたいなのなんですか?」

「なんのこっちゃ?」

「ちょっと回していいですか? 回しますよ……硬っ!……わっ! 窓があいた!(◎_◎;)」

「あたりまえやないかい」

「え〜! こんなの初めて見た〜」

「ほんまかいや! ワシが車を売ってた頃は、今度の新型は、パワーウインドウがついてるんですよ、ゆうて、自慢しながら売ったもんや」

「えっ! パワーウインドウって言うんですか? それなら、このグルグル回すやつは、なんて呼ぶんですか?」

「そんなもん、知るかいや……だいたいやな、ワシらの頃は、パワーウインドウだけやのうて、ハンドルもパワステやなかったんやで。せやから、止まってる時には、スエギリなんかできひんねん。ハンドルが重すぎて」

「マジですか?」

「それから、パワーステアリングが出た時、今までの「オモステ」とちごうて、今度の新型は、止まっててもハンドル指一本で回りまんねんで、ゆうて自慢したがな」

「へ〜知りませんでした」

「だいたい、車にエアコンが当たり前についたんは、ごく最近やで。昔はそやから、高級車でも、運転手に三角窓がついてたんや、風がはいりやすいように」

「何ですか? 三角窓って」

「これは説明が難しいぞ、こんな、こんな、こんなんや」

「じゃあ、クボさんが乗ってたセンチュリーも、それがついてたんですか?」

「そうや。そやけど、この場合は特殊やな」

「何がです?」

「センチュリーの三角窓な……電動で動くねん。そやから、パワー三角窓やな」

「それ、ネーミングおかしいでしょ? どうせなら、パワー・トライアングル・ウインドウとちがうんですか?」

 と、背に負った娘に正しい答えを教えてもらいました、とさ。めでたし、めでたし。

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