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エッセイ 蟻との戦い

 事件の発端は、可愛い可愛い、 AKI ちゃんが、大好きな、お饅頭を頬張りながら発した一言。

「せんせい……アリ……」

 目が悪い私が気づかなかったのですが、可愛い可愛い お饅頭が大好きなAKI ちゃんが指差す場所には、大量のアリの行列が……。

 原因は蜂蜜の瓶でした。
 蓋のところに蜂蜜が残っていたようで、それを見つけよったんですね…偵察部隊のアリが。

 報道によると、地道な探索によってついに、稀に見る純度が高い糖分を発見した偵察部隊のモシカシタラ・アリ隊長は、さっそく本部にサンプルを持ち帰り、試食・吟味した結果、上役や、さらに女王蟻にも報告し、ついに一個師団が我が家のミズヤ に派遣されたということです。

 偵察部隊はさらに、コンロ付近の調理台に置いてある、砂糖壺をも発見し、蟻国の機運は一気に高まりました。

 ところが、アメリカ大陸を発見した白人そっくりな気分に浸るアリたちは、ついつい、調子に乗り過ぎて、神の怒りを買うはめになりました。

 神は迅速に、現場を制圧せんとして、駆逐部隊を送り込むことにしました。

 陣頭指揮は、名将と名高い、フマキラー将軍。

 ちなみに、fly(蠅)のフライの“フ”と  
 mosquito(蚊)のマスキートの“マ”に、
 killer…殺し屋を付けたのが、フマキラーの語源です。

 ハエや蚊だけでなく、蟻 ant の"ア" にも適応するために、フマキラーァ の、余韻である、「ア」の母音…をして、蟻に対しても出兵可能だと、最高裁が判断しました。いわゆる、拡大解釈というやつです。

 かなり無理がありますが、待ったなしの厳しい現実を前にすれば、法はどうしても、非力にならざるをえません。

 かくして、ノルマンディー上陸を彷彿とさせる規模の、世紀のウルトラ大作戦が繰り広げられました。

 おおかたの予想に反し、戦いは、わずか3日で決着がつきました。

 敵を知り尽くした、フマキラーァ将軍が持つ技術の結晶は、決してバッタもんではなかったのです。

 戦い済んで日が暮れて……やっぱり、戦争は残酷です。

 将軍の報告によれば、敵国は全滅したそうです。

 兵隊蟻だけでなく、一般市蟻(人)も、女・子供…女王蜂もすべて……。

 ふと、
「ここまでする必要が、ホンマにあったのかどうか…?」
 胸がチクっと痛みます。

 いろいろと、人類の存在自体を、考えさせられるきっかけとなりました。

 とりあえず、合唱……ちがう、歌うてどないすんねん! 合掌。

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