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里都まち♡なかいわいがやサロンレポートvol.3│基本構想は“みんなの希望”。次世代へのおくりものを積み上げよう

全6回の開催を予定している「里都まち♡なかいわいがやサロン」。いよいよ半分の折り返し地点となりました。3回目のサロン、8月9日(金)のテーマは「視察報告をもとにみんなでディスカッション」でした。
会場には、2回目の先進事例視察に参加した顔ぶれが多く集まるなか、初めてサロンに参加する方たちの姿もありました。初回に続き50名を超える町民が集まった農村環境改善センター。
じつはサロンの終盤、震度5弱の地震に見舞われる想定外のハプニングも。幸い被害はありませんでしたが、その場に居合わせた誰もが災害への意識を見直す時間にもなりました。

グループディスカッションのために、ひとつのテーブルに4~6名が着席。全部で10のグループができました

第3回目のわいがやサロン

はじめに教育委員会生涯学習課の原学さんから、町としての計画と、今日のサロンの内容について共有がありました。

「中井町では、これまでも生涯学習施設の整備・検討を行ってきましたが、令和9年度中の開館という明確なビジョンをもって進めていくことになりました。その取り組みのひとつとして、町民全体があらたな施設の整備をわたくしごととして考え、主体的に意見を交換する場として、この『わいがやサロン』を開催しています。

全6回のサロンをとおして、生涯学習施設に付すべき機能を、皆さんとともに考えていきたいと思っています。本日は、瑞穂町に視察へ行った皆さまからご共有をいただいたのち、あらたな生涯学習施設の『基本構想(案)』について、理解を深めていきましょう」

令和9年度の開館に向けた生涯学習施設の整備について、町としての方針を共有する生涯学習課の原学さん

みんなの視察報告

前回のわいがやサロンは、東京都・多摩地区にある瑞穂町の「瑞穂町図書館」と「瑞穂町郷土資料館 けやき館」への訪問でした。あれから約2週間、視察の熱が冷めやらぬ町民からの共有です。本プロジェクトのコンサルティングを担うアカデミック・リソース・ガイド株式会社(arg)の岡本真さんが、会場の参加者へマイクをまわしていきました。

会場をまわりながら、視察に参加した町民へマイクをまわす岡本真さん

ある参加者からはこんな報告が。

「ここは自分たちの“居場所”だと感じられるような図書館でした。飲食ができること、禁止事項がないことなど、訪れた人が快適に過ごせる場。無料の飲み物や、軽食の自販機があるような図書館は、見たことがありませんでした。夏休みに入ったばかりのタイミングだったので、子どもたちもおしゃべりをしながら、のびのびと宿題をやっていて。中井町でも、この場所を使うわたしたちが入り浸ってしまうような場をつくりたいと思いました」

また別の参加者からは、テーマ配架に関するお話もありました。

「今日は子どもたちも来ているので、どんな風に本が並んでいたかをすこしお話しします。瑞穂町図書館は、本屋さんと同じように、たとえば生活や暮らし、文化やスポーツといった、テーマごとに本が並んでいました。自由研究に役立ちそうな本も、探しやすいですね。本の量は中井町の3倍ぐらいありましたが、空間に圧迫感がなく、とっても広く見える配架になっていました。また郷土資料館は、一つひとつのものに対して説明をするのではなく、瑞穂町の歴史と暮らしを大切にしていることが分かる展示でした」

ほかにも「管理をしすぎていないから、居心地がいい。監視員がいなかったり、隠れるような場所があったり。また来たいと思える図書館」といった声や、視察のあと別の日に、もう一度お友だちと一緒に瑞穂町へ行き、図書館と郷土資料館を訪れたと話す参加者も。中井町でつくる生涯学習施設をどんなものにしていきたいか、より具体的にイメージをふくらませていきました。

郷土資料館のロビーにあった鳥観図で、町への興味を惹かれたという声が多くありました。瑞穂町は、町の面積が中井町とだいたい同じ。中井町でも“鳥観図”のような見せ方は有効かもしれないと岡本さんもコメントします
瑞穂町図書館は、グッドデザイン賞「グッドデザイン・ベスト100」を受賞しています。館内の明るい雰囲気や、木の温かみ、サインなどの丸みのあるデザインに、心が安らぐような印象をもったという声も

基本構想は“みんなの希望”

あらゆる公共施設をつくるとき、はじめにあるのが「基本構想」と言われる文書です。中井町では老朽化が課題となっていた、農村環境改善センターを建て替え、生涯学習施設を検討するための基本構想を、2016年に行政・議会の内部文書としてまとめています。

それから8年。コロナ禍を経て、学校でもギガスクール構想(デジタル化)などが進み、役場一帯の開発の見通しも受け、構想そのものをアップデートしていかなければならないと岡本さんは話します。

そもそも「基本構想」とはなんでしょうか。「構想」の段階では、現実的に実現できるかどうかにかかわらず、この施設をどんな風に使っていきたいか、人びとの願いをふくらませることが大切です。「基本構想は“みんなの希望”」と岡本さん。一方で、構想を実際に実現できるものにしていく段階が「計画」です。

2016年の基本構想から、2024年の基本構想(案)の現状について共有する岡本さん

基本構想の中身

続いて、現状の「基本構想(案)2024」の中身のポイントを、スクリーンに投影しながら共有していきます。各テーブルにも「基本構想(案)2024」が配布されました。2016年の基本構想をベースとしたもので、確定版ではありません。ここに、わいがやサロンでの町民の声を反映していきます。

配布された基本構想を読み込む参加者たち
基本構想(案)2024の現状の章立て

いま重要なのは、第1章と第2章です。第1章は計画の必要性についてまとめています。そして第2章が施設の理念と機能です。そもそもなぜ、施設が必要なのでしょうか。1章では背景としての中井町の概況や人口の推移、上位計画との関係、検討の経緯や、生涯学習施設に求められるものなどを整理しています。その結果、中井町が目指す生涯学習施設は、“多機能複合施設”であることが望まれています。

第1章のポイント
・複合から融合へ
・施設からエリアへ

第2章では生涯学習・地域交流拠点として目指すキーワードや、キーワードを具体化するために必要な機能などをまとめています。そこでの基本理念は「学びから始まる『里都まちなかい』交流のシンボル」となること。自分とは異なる他者との対話から、学び合うことの大切さは、わいがやサロンの参加者たちも実感してきたことです。

第2章のポイント
・集う×憩う(町民が気軽に立ち寄れる地域交流の拠点)
・学ぶ×教える(多様な学習や芸術活動等の生涯学習の拠点)
・繋がる×交わる(既存施設の連携を生み出す地域連携の拠点)

基本構想(案)2024第2章のポイント

エリアのグランドデザインは、次世代への“おくりもの”

本プロジェクトには、基本計画の策定や、設計者の選定に向けた建築のプロフェッショナルとして、アドバイザーを迎えています。大阪中之島美術館を設計した、建築家の遠藤克彦さん(遠藤克彦建築研究所)です。東京と大阪に設計事務所を構える遠藤さんは、茨城大学大学院の教授でもあります。

現在、中井町が構想する生涯学習施設は、中井町役場、保健福祉センター、郷土資料館など複数の公共施設が集積する比奈窪エリアに建設を予定しています。その際、生涯学習施設をひとつの施設、箱として閉じないで、エリア一帯をどう使っていくかを考えることが大切だと、遠藤さんは話します。

中井町役場、保健福祉センター、郷土資料館など複数の公共施設が集積する比奈窪エリア

「このエリアの一つ一つの建物には、寿命があります。たとえば中井町役場は数10年後には建て直すことになるでしょう。建物の使い方が変わるケースもあるかもしれません。そういったエリア全体の見えない未来を、どう予測していくか。

皆さんは、次の世代にこのエリアをどう使ってほしいですか? 発注者側の視点になって、そのグランドデザインをまとめていくことが大切です。そう遠くない未来へ向けて、次の世代への“おくりもの”をどうつくっていくか。私も設計事務所をやってきた27年間の知見を活かし、全面的にバックアップします。町民の皆さんのいいメッセージを、一緒に積み上げていきましょう」

松田町に住んでいたことがあり、自転車レースの練習でこのあたりも走っていたと、中井町とのゆかりを話す遠藤克彦さん

基本構想(案)2024に足したいこと、引きたいこと、掛け合わせたいこと

いよいよ“わいがやタイム”のスタートです。テーブルには「基本構想(案)2024に足したいこと、引きたいこと、掛け合わせたいこと」と書かれたA4用紙が、各自に1枚配布されました。第1回のサロンと同様に、それぞれの思いを書き出します。
それをグループ内で見せ合ったうえで、A3サイズの用紙に、グループごとの案をまとめていくワーク。各グループでは、ときに和やかに、ときに熱心に対話がはじまりました。

グループをまわりながら、町民たちと意見を交わす遠藤さん
足したいこと、引きたいこと、かけ合わせたいことを、A3用紙にまとめていく参加者たち
わいがやタイムは、意見を交わしながら、それぞれの視点を学び合う時間に

小・中学生の子どもたちが集まったグループからは、「足したいものはお姉さん、引きたいものはおじさん」というユニークな視点が出てきました。岡本さんは「自分たちにとって、ちょっと話ができるお姉さんが、この町に少ないということなんですよね。いまの人口減少の最大の課題が浮き彫りになりました」と応じます。

また別のグループでは「どこの行政にもあるような図書館ではなく、中井ならではの特色をもたせたい。たとえばシダやコケ、昆虫など、中井ならではの専門性に特化した蔵書をそろえればPRにつながるのでは」という声が。

まちの「シンボル」になるような場がほしい。瑞穂町図書館の“借景”の考え方は、自然豊かな中井でも取り入れたいという声も

足したいこととして「バスターミナル」という視点もありました。「中井町には駅がない。ここが駅のように、ランドマークのような場所になったらいい。二宮から直行便があってもいい」。かけ合わせたいものとしては「図書館×体育館」という声もありました。

半分ほどのグループが話し合いの結果を発表したところで、会場全体が大きく揺れました。どーんという縦揺れに続き、しばらく振動が続きます。秦野を震源とした震度5弱の地震でした。幸い被害はありませんでしたが、ここでサロンは終了となりました。

すかさず「机の下に入ってください」と、生涯学習課の三浦隆太さんがマイクで会場にアナウンス

予期せぬ終わりでしたが、会場に居合わせた誰もが、老朽化した施設を建て直すことの必要性、日ごろの防災への備えについて、あらためて考える時間になりました。

次回、第4回のわいがやサロンでは、瑞穂町図書館リニューアルの立役者でもある、司書の西村優子さんを講師としてお招きします。中井町の生涯学習施設に対して、西村さんからもご助言をいただきながら、来月もわいがやとサロンを進めていきましょう。
次回わいがやサロンへのご参加を、お待ちしています!

次回以降開催概要

4回目:視察先の職員を招いて先進事例から学ぼう
日時:9月14日(土)13:30~15:00

13:00から開始までプレサロン(フリートーク)オープン
場所:中井町農村環境改善センター1階多目的ホール

最新の情報は、中井町のホームページやSNSをご覧ください。

中井町公式Instagramアカウント
https://www.instagram.com/nakai_town/

取材・文:及位友美(株式会社ボイズ)
撮影:菅原康太

参加者が各テーブルメンバーで記入したA3用紙を以下に公開! 今後の議論の参考にご覧ください。


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