#10 無駄の排除

最近ネックレスをするようになった
もともと装飾品が嫌いで,シンプルな格好が好きだ
腕時計もできれば付けたくないけど,社会人としてのマナーのような気がしてとりあえず仕方なく付けている
なんなら長袖も嫌いだ
前腕が露出していないのが嫌いで、すぐに腕まくりしてしまうので大抵の長袖はすぐによれよれになってしまう

そんな以前の僕が嘘のように今ではネックレス,サングラス,指輪,ブレスレットが好きでメルカリで好みの品を探す日々だ

きっかけはある朝

前日は仕事終わりで合流した女の子とスーパーに行き,適当に食材を買いその子の家でご飯を作って食べた
オートロックで部屋はそこそこ広く,趣味なのだろうか動物の置物やマットレスが所狭しと散らかっている部屋だった
僕は壁に飾られている,いろはにほへとが描かれた手拭いを見ながらシャワーを浴びるかどうかぼんやり考えていた
その子は慣れない手つきで洗い物を済ませてベッドでスマホをいじっている
僕もその隣で横になり電気を消してセックスに溺れた 

遮光性の低いカーテンから主張の強い陽射しが差し込んでいることに気がついて目が覚める
時計は昼時を指している
いつの間にこんなに時間が経ったのだろうと不思議に思っていると隣で寝ているその子がもぞもぞと目を覚ます
おはよう
ずっと起きてた?
ううん今起きたとこ
内容は取るに足らないが人間が高等動物であることを知らしめるような言語のやり取りをする
そしてやはり人間も動物なのだと再確認するようなキスをして2人は動物にもどる

その子は膝立ちのまま手を背中に回して自分のブラジャーを外す
ベッドに寝転んだ僕は逆光で彼女の表情は分からないがその輪郭は神々しく見えた
ああ,“外す”という行為は尊いんだ
ましてそれが外されることを望まれていた物であれば余計に
いや,むしろムダな物の方が断捨離に似ていて良いのか
僕も何かを外したいな
ムダを身に付けたいな
シンプルな今の僕は“外せない”のだ

だから今日も僕は女性がブラジャーを外すようにネックレスを外す

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