見出し画像

競馬場に行きたい③ ~出会い~

「職場の人が競馬場一緒に行きたいって言ってるんだけど一緒に行ってくれる?」
どんな流れかは忘れたが、名古屋の友人と競馬に行くことになった。
仲良くなれるのか不安だった夏の始まり。

2013年中京競馬場7月の中京記念の日。
名鉄の中京競馬場前駅集合。
まず友人と合流。
1人また1人と増え、競馬歴1年の若輩者と初見3名、計4名のウマ女軍団ができた。
第一印象は覚えていない。
ペコペコ頭を下げよろしくよろしくと言ったと思う。
とにかく必死で競馬の事を教えたり話したりしていたと思うが、気づいたらコンビニで大量に買った戦利品をガサゴソプシュっとして、プチテラス席で乾杯をしていた。

吊り橋効果とは良く言ったもので、非日常の高揚感なのか、仲良くなるのに時間はかからなかった。
一通りの競馬の説明が終わると皆自由に動き出した。
「パドック見に行かない?」
「馬券買ってみた!」
「ビール飲みたい買ってくるいる人ー」
「次のレースこれ?なにがくるかなー」

ふと、トイレで1人になった時に思った。
楽しい。とにかく楽しい。
心配してたのがウソみたいだ。
酒の効果もある。
馬の効果もある。
夏の暑さもあるかもしれない。
それにしても、皆自由というか、自立というか、誰一人いい意味で遠慮しないことが心地よかった。
残念ながら皆のビギナーズラックはなかったが、一喜一憂しながら楽しい時間が過ぎていった。

この日は夏競馬開催最後の日で、ターフ解放のイベントがあり、全てのレースが終わった後に芝コースに入ることができた。
ゲートではしゃぐ面々。
サクサクした芝の感触。
芝結構長いんだねとか話しながら、傾きかけ、スタンドに消えていく夕日を感じながら、約1ハロンをウマ女4人でだらだら歩いた。
いやぁ楽しかったねとポツポツ喋る。
ゴール板の前で写真をとる。
当時はエモいなんて言葉はなかったけど、今思い出してもエモい瞬間だ。

「これもらった。家族連れの写真とってあげたら1個くれた。」
自分が持ってるより私が持っていた方がいいとニコニコしながら渡してくれた小瓶には、今日の日付とダートの砂が詰まっていた。
先着でしかもらえないノベルティーを、今日出会ったばかりの私にくれる優しさ。
馬券があたった時より嬉しかった。

皆それぞれに家路につく。
手を振る。
無意識に、ちゃんと、友人に手を振る感覚で手を振っていた。
絶対次遊ぼうね。
また呼んでね。
で、で、次は名駅で飲もう。

あまり空気の読めない私でも、あ、これはまた誘っていいやつだと感じる。
1人になって小瓶の砂を見つめる。
競馬がますます好きになった夏だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?