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南アフリカ前大統領の収監から考えること

南アフリカの前大統領ズマ氏法廷侮辱罪で収監されました。

南ア、ズマ前大統領を収監 法廷侮辱罪で禁錮1年3月:日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGV08DY50Y1A700C2000000/

9年にわたり絶大な権力を誇っていたズマ氏に対する法の支配の勝利であると各所で報じられています。
国のリーダーが汚職に走ったとき、誰がそれを追求することができるのか。このような意味で裁判所を始めとする司法の独立は、人権の最後の砦となります。

南アフリカ以外の国、例えば前アメリカ大統領トランプ氏でさえも、バイデン氏勝利の選挙結果を覆そうと数十件の訴訟を提起しましたが、裁判所はトランプ氏の言い分を認めませんでした。
他方でロシアにおいては、反体制派の指導者ナワリヌイ氏が収監されるなど、司法の独立が懸念されています。

ではわが国の司法の独立はどのように保障されているのでしょうか。
まず憲法において、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」と定められています(76条3項)。
司法権そのものが立法や行政から独立している、というだけではなく、一人ひとりの裁判官が、他の何者からも指示や命令などを受けずに良心に従って判断をすることができると言うものです。

しかしながら、この司法権の独立が脅かされた事件が歴史上いくつも起きています。
著名なのは、大津事件でしょうか。
滋賀県大津の巡査が、来遊中のロシア皇太子の傷を負わせた事件で、政府が外交上の理由から巡査を死刑にするように働きかけたというものです。当時の大審院長児島惟謙は、それに抵抗し、結果として、巡査を無期懲役に処しました。児島惟謙の行動には様々な意見もありますが、強大な政府の圧力から司法全体の独立を守る行動として、今に語り継がれています。
このほか、浦和事件や、吹田黙祷事件など、興味があれば調べてみてくださいね。

このような裁判官も、もちろん勝手気ままに判決を出すことができるわけではなく、一定の民主主義による制約も受けています。
先ほどの憲法の条文でも「憲法及び法律にのみ拘束される」とありますから、逆に言えば裁判官であっても国会議員の手による法律に反した判断はできないわけです。
さらに国民審査もあります。国民審査については、また別の会でお話しさせていただきます。

弁護士 野村彩(のむらあや


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