見出し画像

【新社会人の皆さまへ】 自らの「スキル・マトリックス」を作りあげていこう 〜ジョブ型雇用社会で生き抜くヒントをガバナンスコードに見る〜

おめでとうございます。
未曾有の事態の中、新たに我らが「社会」へいらっしゃること、心より歓迎申し上げます。
刺激に満ちた、変化の激しい、真剣勝負の、このビジネスや政治の世界を、皆さまが楽しんで伸び伸びと泳ぎまわることこそが、この国の、この世界の宝となります。

さてひとつ「ネタ帳」として小話を差し上げますと、この春にコーポレートガバナンス・コードが改訂される予定です。
その改訂案の中で、取締役役会の構成、つまり「どんな人を取締役会のメンバーにするか」を考えるときに、「スキル・マトリックス」が有用とされています。
要は、「この取締役はこんなスキルを持っていますよ」ということを分かりやすしようという話です。


【スキルマトリックスの例】
取締役の専門や経験ひと目で キリン・電通ら一覧表:日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58247780Q0A420C2MM0000/


メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ、なんて最近よく言われます。
かつて戦争で焼け野原となった日本の復興のため、社員が「会社」のために一丸となって、目標のために邁進する…。そんなモデルが非常にうまく働き、我が国は目覚ましい高度経済成長を成し遂げました。
しかしいま、そのモデルがうまく働かなくなっており、ひとつの変化として、「会社のメンバーであること」を中心にした働き方から、「ジョブ」に基づいた働き方に移りつつあるという状況にあります。
(上記ジョブ型雇用については若干乱暴なまとめですので、詳細は別途調べてみてくださいね)

そこでジョブならぬ上記「スキル」のマトリックスの話になるわけですが、漫然と日々を過ごすのではなく、これを意識してみてほしいのです。

「スキル」の内容はなんでもいいのです。
自分で項目を作って、表の「◯」を増やしていこう、ということです。
べつに「公認会計士」「弁護士」などの国家資格でなくて全く構いません。
そもそも「弁護士」だってスキルを細分化して差別化を図っています。「会社法」だけでは足りないから「英語」「プレゼン能力」「独禁法」を足そう、などです。
「パワポが部署の他の人よりちょっと綺麗」「挨拶が丁寧」「人の名前を覚えて忘れない」…初めはそんなことで良いのです。

こうやって「スキル・マトリックス」を積み上げていって、ひとつの組織だけではなく、あらゆる市場で評価される社会人になること…。
なぜこれをオススメしているのかといいますと、それは、そうすることで
「嫌になったら逃げられる」
からです。
そうです、違法な長時間労働をさせられたり、上司がパワハラをしたりするような、嫌な会社だったら、辞めてしまえば良いのです。
あなたには「スキル・マトリックス」があるのですから。
力を積み重ねており、そして、それを言語化することができるのですから。
そんな会社には見切りをつけて、もっと良いところを探せば良いのです。

当職の生涯の目標のひとつとして、
「ハラスメントを苦に自殺した、などという哀しい事例をこの世から撲滅する」
というものがあります。
ハラスメントを受けて、苦しかったら、逃げれば良いのです。
もちろん、スキルがなくたって、逃げて良いんです。生活保護はまったく恥ではありません。正当な国民の権利です。
ですがもし若干のスキルをつけていることで、逃げる勇気が、少しでも増えるかもしれません。

「ハラスメントをしたら社員が辞めてしまうんだ」…そんな当たり前のことに、会社に気付いてほしいのです。

なお誤解しないでいただきたいのは、スキルを増やすときに、苦手なことを無理して「◯」にするというより、自分が得意なことに改めて気付いてそれを伸ばしてスキルの項目にしていく、ということです。
また、ある会社で有用なスキルは、どの会社でも重宝される可能性は高いです。身につけるべき「スキル」が思いつかなかったら、まずは目の前の仕事を誠意を持ってやってみる、それで十分です。そのうち自分が得意な分野に気付いて言語化することができるようになります。

なんだか後ろ向きな話のようですが、新社会人の皆さま、ぜひ仕事を楽しんで、そしてちょっと苦しかったら、あまり自分のせいにはしないでください。
あなた方が元気で健やかに過ごすこと、それが少しだけ先輩の我々の、心からの願いです。
一緒にお仕事できる日を楽しみにしています!

弁護士 野村彩(のむらあや


コンテンツをご覧いただき、誠にありがとうございます。頂いたサポートを励みに、有益な情報発信に努めてまいります。今後とも宜しくお願い申し上げます。