レナサイエンスについての考察

注(私は医師ではありません。記述に間違い等あるかと思いますがご容赦ください。レナが好きなのでただ自己満足のために書いております。)


PAI-1とは


 PAI-1という物質は、血管が傷ついたり刺激や炎症を受けた時、血管内皮(血管内側の)細胞などから血液中に放出される。PAI-1が血液中に増えると、血栓(血の塊)を溶かす線溶系という機能を障害してしまい、血栓が解けずに残りやすい状態になる。血栓が血管の途中にできたり、それが飛んで行って細い血管に詰まると、先の組織へ血液供給ができなくなり、組織は機能不全やしんでしまうことになる。
 上記の他にも、炎症や組織の線維化、ガンに関する作用、果ては老化に関わるすべての主症状に関与しているとされているのがPAI-1である。

PAI-1を阻害することで得られる効果


1.抗血栓作用

 血栓による障害を改善する目的でPAI-1阻害薬はもともと開発された。抗血栓薬いわゆる血液サラサラの薬である。
 ある論文ではマウスやカニクイザルでの経口薬での実験で以下のことがわかったとしている。
 ①既存の抗血栓薬と同等の力があった
 ②投与量を大きくしても出血時間を延長しなかった
 ③血管内にできた血栓のみを溶解。他への出血性副作用がでにくい
 
血管の新生と修復を促す因子を活性化する作用もある

2.抗炎症効果

 ある論文では、腎炎マウスの経口投与実験で以下のことがわかったとしている。
 ①ステロイド系抗炎症薬と同程度に炎症が抑制された
 ②マクロファージに直接的に効果を及ぼし炎症を抑える
 ③糸球体(腎臓の構成要素の1つ)へのマクロファージの湿潤が有意に抑制されて、微小血栓の形成や細胞の障害、フィブリン(血栓や線維化の原因となる物質)の沈着が寛解した。 
 
 ちなみにレナ会長の宮田氏は腎臓内科医。

3.抗線維化効果

  PAI-1が欠損しているマウスモデルでは線維化の過程が大幅に遅延する。
 =組織が硬くならず、機能を保てる

4.アミロイドβ蓄積の阻害

  アミロイドβはアルツハイマー型認知症の原因である。PAI-1阻害薬の投与により、アミロイドβの脳への蓄積を抑制し、認知機能の改善がみられたとするマウスの実験結果がある。

5.抗がん剤としての作用

  「PAI-1は免疫チェックポイント分子を介してがん免疫を阻害することを見出しました。動物モデルでの試験で、RS5614を投与した動物で悪性黒色腫(メラノーマ)や大腸がんなどのがんが退縮すること、さらに免疫チェックポイント阻害抗体と併用することで相乗的に強くがん免疫が増強されることが分かりました。」とホームページ上にある。

6.老化防止

 「米中西部に暮らすキリスト教の一派、アーミッシュコミュニティーの人々を調査し、PAI-1遺伝子を持たない人は、持っている人に比べて10年長生きすることを見出しました。また、欠損する人々は糖尿病など病気にもかかりにくいことも分かりました。」とホームページ上にある。

 以上のことから、PAI-1は私たちが生きる上でからだのいたるところで作用していることがわかる。PAI-1については、医療の教科書には記載があり、測定する方法も確立され、多くの論文が出ていることからも医療業界ではすでに知られた存在である。
 

☆PAI-1阻害薬が効きそうな病態

1.抗血栓薬としての利用

 ・血管が詰まる系の病気
  脳梗塞
  心筋梗塞
  狭心症
  深部静脈血栓症
  肺血栓塞栓症
  急性四肢動脈塞栓症
  閉塞性動脈硬化症
  糖尿病合併症
  線溶抑制型DIC など

 ・血液サラサラの薬としての利用
  (上記に加えて)
  心房細動
  心臓弁膜症
  ペースメーカー術後
  心臓血管系の手術後 など

2.抗炎症や抗線維化としての利用


 ・自己免疫疾患(強皮症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、間質性肺炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、各種血管炎、川崎病、多発性硬化症など)
 ・肺気腫
 ・慢性心不全
 ・感染症等による肺炎、敗血症、ARDS
 ・癌による悪液質 など

3.アミロイドβ蓄積予防、老化の防止


 ・アルツハイマー型認知症
 ・動脈硬化予防 など

4.抗がん剤としての利用

 ・慢性骨髄性白血病
 ・悪性黒色腫
 ・大腸がん
 ・非小細胞肺がん
 ・血管肉腫 など

 以上、ホームページ上に載っているものや私の思いつくものを羅列してみた。もちろんこれ以上にあるだろうし、期待される効果も今後追加されるかもしれない。まさにゲームチェンジャーになりうる薬である。

競合について

 現在PAI-1阻害薬はレナサイエンスのみが治験を進めている唯一の企業である。
 「過去に国内外大手を含む多くの製薬会社やバイオベンチャーが低分子PAI-1阻害薬の開発に取り組みました。幾つかの薬剤はマウスやラットの動物モデルで有効性が報告され、PAI-749(Diaplasinin)は臨床ステージまで進みましたが、臨床第Ⅰ相試験で開発は中止されました。」とホームページ上にある。なぜ上記の企業は第Ⅰ相試験で開発を中止したのかが、ある論文に載っていた。血栓症の動物モデルでは有効(血栓を溶かした)であったが、ヒトでの血栓形成または線溶系に影響を与えなかったためとのこと(2010年)。これ以降世界的にPAI-1阻害薬の研究はほとんど進まなかった。しかし、その後宮田氏を含むチームの研究でPAI-749と構造の違うPAI-1阻害薬で、試験管での人フィブリン塊の溶解試験に成功し、また、血栓症モデルのカニクイザルでの実験においても、血管閉塞時間の有意な短縮を示したとしている。
 大きな血栓症に対する試験は現状行われてはいないものの、微小血栓を発症する新型コロナウィルス肺炎に対するⅡ相試験で有効性が示唆されていることを考えても、抗血栓薬として効く可能性は十分にあると考える。(Ⅱ相試験で統計学的有意差は出なかったのは、患者数が少なかったことが影響していると私は考えている。また、CMLでの第Ⅱ相試験では素晴らしい結果を出していることからも、PAI-1を阻害する機序はヒトで機能していると考える。)

新型コロナウィルス第Ⅲ相試験について

 変異株等で対象となる肺傷害患者が増加した場合に速やかに次相の治験を開始いたしますとのIRが出ている。5類に移行したもののウィルスが消えたわけではない。しかし、人々の警戒感は明らかにゆるんでいる。観光地はごった返し、マスクを着用している人も目に見えて減っている。このような状況下では、今年は過去最大の感染者数をたたきだすのは時間の問題である。肺炎になる人の割合はオミクロンで減少し、今後の変異でさらに減るかもしれない。しかし、感染者の絶対数が増えれば、肺炎の患者も比例して増加してくると考えられるのは当然であろう。以上のことから、日本で治験が開始される可能性はあると思う。
 第Ⅲ相試験が開始されれば医師らが治験に値すると判断したということなので、承認にこぎつけれる可能性はあると考える。

オーファンドラッグの指定


 慢性骨髄性白血病(CML)に対する第Ⅲ相試験を実施中であるが、第Ⅱ相試験の結果をみてみると、オーファンドラッグに指定されてもおかしくはない。オーファンドラッグ指定のIRが出るのは時間の問題であると考える。

治験を支える医師主導試験


 医師主導試験の利点は、「質」と「スピード」、すなわち「効率」であるとレナは述べている。その病気を専門とし、日々診療を行っている医師が主導しているため、当然といえば当然である。また、医師主導試験では企業側(レナ)の持ち出し金が少ないことも利点である。以上のことから、レナの赤字は少なく抑えることができ、医師主導によりパイプラインも多く作ることができる。

AMEDによる助成金


 レナのPAI-1阻害薬ではアンメットメディカルニーズと呼ばれる、いまだ有効な治療方法がない疾患を対象としたものが多い。難病や癌などである。そのような疾患を対象にした画期的な治験であれば、AMEDの助成金は今後も受けやすいと考えれる。レナも赤字を抑えるためにうまく活用している印象である。
 また、AIの分野でもAMEDの助成は期待できる。現在の医療支援AIは、実際に作ろうと思ったら各専門家同士の協力が不可欠なため、それを行える企業は限られる。同じAIを他に手掛けている企業は今のところ見当たらず、レナの独壇場であると言える。この医療支援AIでもAMEDの助成金は過去に支給されているため、今後も入ることは十分予想される。開示情報を見ていると今後新たにパイプラインに加わる医療支援AIがあり、それらもAMED助成金を受けれそうな印象である。

ワラントについて


 新興バイオといえば悪魔の資金調達MSワラント=新株予約券の発行がつきものである。しかし、レナに関しては全く心配をしていない。上場により、現在のパイプラインで2025年までの研究開発費は確保済み。今年度中には腹膜透析に用いるディスポーザブル極細内視鏡のガイドカテーテルが承認され、やっと販売が開始されることが予想される。この金額は少ないものの安定した収益が見込める。また、上述したAMEDからの助成金に加え、契約一時金やマイルストーンなどの収益も見込まれる。赤字の額はさらに抑えられる可能性があり、ワラントのリスクはさらに下がる。そうこうしている間に医療支援AIを販売できるめどがつく。そうなると、安定した収益の見込みが立つということから銀行団のシンジケートローンでお金を引っ張ってくることができ、ワラントをする必要がなくなる。

まとめ


 ・PAI-1阻害薬で治験を進めている唯一の企業
 ・適応が広すぎて宇宙
 ・医師主導試験により、効率のよい治験と少ない赤字
 ・AMEDからの補助金
 ・契約一時金、マイルストーン
 ・ワラントする前に黒字化もしくはシンジケートローン

 といったことが挙げられる。また、今回記載はしなかったが、ピリドキサミン(=ビタミンB6)や禿の薬などもある。医療支援AIや医療機器についても今回深掘りで述べていない。

 長年いろんなバイオを見てきたが、現状記載のある多数のパイプラインを持ちながら、これほど赤字が少ない企業を私は他に知らない。時価総額が60億円程度に収まっていることは良心的すぎて言葉がない。今買っている人たちは、イノベーター理論でいうアーリーアダプターに位置する人たちであると思う。 
 ゲームチェンジャーになりうる薬を持ち、世界の医療に貢献し、将来のノーベル賞候補になるであろう素晴らしい企業を私は見つけてしまったのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?