大人の人


悲しいことも 苦しいことも
ひとつひとつ手にしていくことが
その手のひらにしまいこむことが
大人になることなのならば
大人はとても悲しい手をしている

その手を伸ばして
掴み取るものが
愛する人の手であったり
追いつづけていた夢であったり
もしもそれが誰にも認められない
寧ろ破棄をすすめられるものだとしても
大人の人は
少しだけ笑ってそれを大事にしまいこむ
手のひらの上にのったそれが
指に包まれて見えなくなる
大きな指
ゆっくりと花が開くように
指の腹が空気に触れる
其処にはもう何もない

たくさん何かを手にしたとしても
背が伸びるわけでもなく
誰かに誉められるわけでもなく
お金がもらえるわけでもないけれど
大人の人は
降りてくる雪は放っておくのに
その何かを何処からか見つけてきて
握る やわらかく

大人の人の手は少し冷たい
大人の人の手は少し乾いて
大人の人の手はぎこちなく
大人の人の手はどこか悲しい
そして

大人の人の手はとても優しい


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