ニセコトバ

私はとても不器用です
言葉が巧みでありません

早口言葉は得意でも
言葉は巧みでありません
話術は上手と言われても
言葉は巧みでありません

本当です
本当だから
本当だからこそ あまりにも
思うことのどれだけも
思うだけの言葉には
決してなりません
叫びだしたいときに


悲しみに声をはりあげたいとき
喜びを誰かに伝えたいとき
苦しさに耐え切れないとき
幸せがあふれてやまないとき
叫びだしたいとき


私はあまりにも口下手すぎて
胸で言葉のくちゃくちゃしたものが
どろどろと渦を巻いていて
その混沌とした言葉たちを
形にしようと懸命な間に
思うことは少しずつ熱を失って
違ってしまったものになります

そして思うこころはとても小さくなって
どこか偽った言葉になります



私はとても不器用です
言葉が巧みでありません

考えたことは口にできても
思うことは言葉にできない
ようやく体裁を繕ったそれは
いつも冷たく断片的で

いつものこと
いつもだけれど
いつもだからこそ それだけは
冷えた心の断片について
考えていくことだけは
決してやめません
叫びだしたいときにも


悲しみに声をはりあげたいときにも
喜びを誰かに伝えたいときにも
苦しさに耐え切れないときにも
幸せがあふれてやまないときにも
叫びだしたいとき


不恰好な造形のそれらを
歪んでしまったガタガタの言葉を
ぐるぐるの渦を巻いていて
混沌としている言葉たちの
本来の形を想定してみて
静かにつぶさに観察しながら
紙片の上に蘇らせます

そして思うこころは少し小さくなって
どこか似通った言葉になります


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