冷たい指


指先が冷たいと感じた時に
横にいる誰かが手を握った
それは己のそれよりはるかに冷たくて
思わず振りほどいてしまった 


暖かそうな手袋をした人を見た
隣に立ってみてもどこかへ行かない
安心してそっと手を握ってみたら
その手はとてもあたたかかった
けれど
その手はすぐさま振り払われて
指の間を冷たい風がすりぬけた


何で俺は当たり前のように
自分だけはあたためてもらえると思ったんだろう
あたたかい手を握ればその手から
その熱を奪ってしまうこと
何でそれが当たり前に
受け入れられると思ったんだろう


振り払ってしまった手を探して
街の中を駆け走る
冷たい風が吹き荒れて
指先にはもう感覚はない
ようやくもっと冷たい指を
最初と同じ場所で見つけた
指の先は震えるけれど もうこの手を離さないように
気付けば街を走った体は 汗が出るほど熱を持ち
誰かの冷たい指先をあたためることを初めて知った


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