迷い路の雨

白い紙のまぶしいことに
思わず涙がこぼれる日には
ペンを持ってもことばが出ない
広い野で迷ってしまったように
帰りたいということと 帰りたい場所とは
しっかり覚えているのに
路がわからない 途方にくれる
だれも隣にはいてくれない
心細くて
帰りたくて
木でさえも隣にはいない
土もある 草もあるけど
よりかかり抱きしめることはできない
空もある 雲もあるけど
いだかれたいのではなくいだきたい
はなさないと わたしのものだと
わたしが選んで わたしが決めたと

白い紙の上に雨がふる
ことばの代わりに雨がふる
インキがにじみ たたずむ影
「かわいそう ぬれてしまう」
憐憫の自己生産は
もう少し 雨があがるまで

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