消費者被害防止ネットワーク東海がボイコネ規約に申し入れた内容(著作権関連)の読み解き
2020年10月20日付で適格消費者団体「消費者被害防止ネットワーク東海」がボイコネの運営をしているNTTソルマーレに対して、申入書を送付しました。
その内容はインターネット上で公開されています。
その内容が、とてもお堅い感じに書かれているので、自分なりに読み解いてみたのがこの記事です。
あくまで個人で読み解いた結果なので、解釈などが間違っている可能性があることも承知の上でお読みください。
以下に引用している規約は、すべて現行のボイコネ利用規約です。また、一部の太字は筆者が手を加えたものです。
知的財産権に関する規定
申入書のなかで読みにくいなぁと感じたのが、「第3 コンテンツの知的財産権に関する規定」の部分です。
知的財産権というのは著作権とか特許権とかそういったもので、脚本(台本)を提供する作者は、最近著作権について考える機会も増えているように感じます。
申入れがされた規約部分は、この部分です。
第 20 条(会員コンテンツの知的財産権)
2. 会員は、当社に対し、当社が以下の目的で会員コンテンツを、地域または期間の限定なく、使用および利用(二次利用を含みます)するための無償かつ取消不能の利用権を許諾します。
(2) 本サービスその他当社が提供するサービスのプロモーションを行う目的(オンラインイベントまたはオフラインイベント等での上映その他の利用を含みます)
(4) 本サービスその他当社が開発するサービスの企画 ・運営、共同研究において利用、改変する目的
4. 会員は、前二項に定める当社及び他の会員の使用又は利用に関し、著作者人格権を行使しないものとします。
規約20条2項(2)と(4)については「本サービスに関連するもの」に改めてくださいとあるけれども、そもそも「本サービス」というのは何をさしているのか。
現状の規約だと、ボイコネを運営しているNTTソルマーレは電子書籍やゲームについても展開しているのですが、そちらのプロモーションにも使えるということが書かれています。
しかし、それだと作者が規約の上で許諾したことになる範囲が不明確で広すぎるということで、この規約は消費者契約法10条により無効になると考えられるので、変えてくださいと書かれています。
消費者契約法第10条
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
「本サービス」が何を指しているのか
ボイコネの規約第1条(2)は
「本サービス」とは、当社が、当社サイトにおいて管理・運営する、声劇等の配信プラットフォームサービス「ボイコネ」を意味します。
と言葉の定義がされています。
規約を変えてくださいという申入れなので、そのとおりに規約が変わったとすると、変更後の「本サービス」は第1条(2)をそのまま当てはめることになるため、『本サービスに関連するもの』というのは『当社が、当社サイトにおいて管理・運営する、声劇等の配信プラットフォームサービス「ボイコネ」に関連するもの』と読み替えることになります。
つまり、ボイコネに関連するものということですね。
これでもまだ、ふわっとしているというか広い気もするのですが、少なくとも電子書籍事業やゲーム事業の企画などで使うためには、事前に作者からOKをもらう必要があるということになります。
趣旨には明言されていないけれど
申入れの理由(1)の下の方に「許諾するだけで十分ですし」とあります。
規約としては「無制限に無償で利用できる」内容となっているのですが、「無償」部分については申入れの趣旨が不明確かなと思います。
限定的にしているので無償の部分はそのままでもいいよということなのでしょうか。
また、「本サービスでの利用を貴社に許諾するだけで十分」という理由から、「本サービス上で」を付け加えるよう申し入れているようにも思えます。
仮にそうであるなら、たとえばYou Tubeなどは「本サービス上」ではないので、少なくともYou Tubeで行われるボイコネのプロモーション企画などで使おうとする場合は、作者の許可が必要になるということになります。
すでに、にじさんじという団体とコラボしているようですが、これもアウトになる可能性がとても高いです。
※ツイートでは「本サービス上で」を付け加えることを想定したものとなっています。
著作者人格権
ボイコネは令和2年7月6日付で規約を変更していて、第53条4項がこのようになっています。
4.前項に定めるほか、ライターは、投稿したシナリオをキャストが本サービス上において本規約を遵守した利用を行う限り、著作者人格権を行使しないものとします。
第20条4項も同じように変更しないと規約内部で矛盾が生じてしまうケースもあるように見えてしまいます。
4. 会員は、前二項に定める当社及び他の会員の使用又は利用に関し、著作者人格権を行使しないものとします。
もっとも、第2条で
本規約は、本サービスの提供条件および本サービスの利用に関する当社と利用者との権利義務関係を定めることを目的とし、以下の表のとおり、利用者と当社との間の本サービスの利用に関わる一切の関係に適用されます。なお、第1章の共通規約と第2章以下の規約との間で、規定内に矛盾抵触がある場合には、第2章以下の規約の規定が優先して適用されるものとします。
とあるので、変更している第53条4項が優先されることになるはずです。
ただ紛らわしいので、「本サービス上において本規約を遵守した利用を行う限り」を付け加えてくださいという意味でしょう。
そして、20条4項は「当社および他の会員の」とあるので、ボイコネ運営会社であるNTTソルマーレについても、同じように規約を遵守している限りはという限定を入れてくださいということも含まれているように思います。
運営会社は関係ないと思えるかもしれないですが、これがないとボイコネ側はどのような場合にでも自由に台本の改変などをすることができてしまうので、それはさすがにマズかろうということでしょう。そらそうだ。
そして「本サービス上において」が付け加えられるということは、さきほどと同じように、少なくともYou Tubeで行われているボイコネのプロモーション企画などでは、作者が著作者人格権を行使できないということにはならないと思います。
まとめると
知的財産権に対する申入れをまとめると、次のように変えてくださいと読み解けると思います。
第 20 条(会員コンテンツの知的財産権)
2. 会員は、当社に対し、当社が以下の目的で会員コンテンツを、地域または期間の限定なく、使用および利用(二次利用を含みます)するための(無償かつ)取消不能の利用権を許諾します。
(2) (本サービス上において)本サービスに関連するプロモーションを行う目的
(4) (本サービス上において)本サービスに関連する企画 ・運営、共同研究において利用、改変する目的
4. 会員は、前二項に定める当社及び他の会員の使用又は利用に関し、本サービス上において本規約を遵守した利用を行う限り、著作者人格権を行使しないものとします。
※(無償かつ)(本サービス上において)というのは、趣旨に明言されていないので括弧書きにしています。
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