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ファントムについて

※ミュージカル「ファントム」を観劇した感想なので
2019年版、2023年版共にネタバレを含みます。
起承転結も何もないです。長いです。
思ったことを忘れたくないので書き残すだけです。






「ファントム」は、「オペラ座の怪人」で有名な
怪人ファントム(本名エリック)が主役の物語。

加藤和樹(KK)・城田優(しろたん)が
Wキャスト主演をするのと
しろたんが演出も手掛けるということで
2019年は死ぬほど期待をして見に行ったけど

そんな期待も超えてしまうほどに
今までで一番素晴らしいKKを見せてもらった。

私の中でミュージカル史上
一番好きな作品になった。

そして3年越しの再演である今回は
キャストがほぼ結構変わった。


エリックの恋敵であるシャンドン伯爵は
2019年は廣瀬友祐さんと木村達成さんだった。

廣瀬シャンドンは、大人っぽくて静かで
女性達が勝手に寄ってくるであろう
低音が響くミステリアスな伯爵だった。
若干面倒くさそうにあしらう姿がまた似合う。

生粋のプレイボーイ感が強い


達成シャンドンは、笑顔がキラキラな子犬で
みんなに優しく爽やかに微笑むせいで
女性達が「私が一番好かれてるのに!」と
ライバル同士で勝手に揉めそう(罪が重い)

初めて女性に声を掛けたのようなワンコみ


そんな両極端なシャンドンだったけど
今回の大野拓朗さんは、前回の二人の
落ち着きと爽やかさを足して2で割ったような
チャーミング感も余裕もある感じだった。

前回はシャンドンとクリスティーヌのシーンで
ララランドっぽいダンスがあったけど
今回は無くなってた。それはそうか。


そして今回爆誕した城田優シャンドン。
何度も見てきた舞台ながら彼の初日は
あまりのかっこよさに空いた口が塞がらなかった。

スタイルの良さが規格外(190cm)


強すぎるビジュで、尚且つシルクハットを被り
計算し尽くされたかのような優しい甘い声で
ゆっくり話しかける姿が完璧すぎて怖い。

そして手の甲にキスをする時にはチュっと
音をたてるのが怖い。響かせにきている。

手を差し出す時も普通に出すのではなく
斜めに掌を広げる感じが
なぜか分からないがめちゃくちゃかっこいい。怖い。

そして圧倒的に歌が上手い。
これはクリスティーヌも惚れてしまうやろ。
KKがあれはズルい!って言ってたのも分かる。

大野シャンドンは誰に対してもニコニコしてるけど
城田シャンドンは興味のない人に執拗に話しかけられると若干眉間に皺がよったりと人間味が垣間見える。


どんな時も穏やかで優雅な彼が、クリスティーヌの前だけはとても嬉しそうにキャピキャピ喋りかけているのを見てるとやはり本当にズルい(褒めてる)

クリスティーヌが舞台の経験もないのにカルロッタに
タイターニアをやってみろと言われた時は、
大野シャンドンはにこやかに喜んでいたけど
城田シャンドンは「えっ、そんな大役を突然?」と
怪しむような素振りがあったのも良かった。

再々演がもしあればぜひKKもシャンドンを🙇‍♀️
シルクハット伯爵絶対似合う。


最後の決闘も城田シャンドンはキレッキレに攻めて
キレッキレに避けながらキレッキレに斬られる。

2階から落ちそうになってぶら下がるシーンは
しろたんならそのまま足が床につくんじゃないか!
と思ってしまうほどに脚が長い。さすが。怖い。

シャンドンはエリックにとっては
余りにも強すぎる恋敵だけど
シャンドンがクリスティーヌに声を掛けなかったら
エリックとクリスティーヌが巡り会うことも
なかったんだと思うとなかなか複雑である。

でもエリックのモンペとしては
前回はシャンドンめ…と思ってしまう時もあったけど

クリスティーヌの真っ直ぐさに
心からときめいて少年のようになる
今回の城田シャンドンを見ていたら、

もしかしたらシャンドンにとって
クリスティーヌは
初めて心の底から大好きだと
思える人だったのかもしれないと
いつのまにか思ってしまっていた。

エリック過激派なのに
シャンドンというキャラに愛着が湧いてしまった。



そしてヒロインのクリスティーヌ・ダーエ。
前回の愛希れいかさんと木下晴香さんは
どっちも可愛くて、どっちもすごく好きだった。
愛希さんはキリっとした美しさで
木下さんはふんわりとした可愛らしさ。


そして今回のクリスティーヌは真彩希帆さん。

もう一人の方が降板して全公演一人で!すごい!

真彩さんは一度宝塚の公演に行った時
ONCE UPON A TIME IN AMERICAで
トップ娘さんだった。

歌がとても上手いのは記憶してたけど

ファントムを見に行けば行くほどに
歌の上手さに目を見張ってしまった。

どれだけ高音になってもしっかり安定していて
なめらかで、本当に舞台のセリフに出てくる通り
天使の歌声。確実に神様から祝福を受けている。

エリックもシャンドンも
みんなが一瞬で射抜かれるのが分かる。

エリックが初めて歌声を聴いて
胸を押さえてるのを見ながら
こちらも一緒に押さえながら見ている節がある。

それまで遠回しな意地悪していた演者の女性達も
両手放しで感激してしまうほどのパワー。


そしてクシャッと目を細めて笑う笑顔や
時折「ふふっ」と溢れる声があまりにも可愛い。

バラドーヴァとして踊る時は細部まで綺麗で
ジャンプや足の反りなど体幹のすごさ!
見ていて本当にうっとりする。

エリックを見に行ってるはずが
彼女が出てくるのが嬉しくてたまらなくなって
彼女が出てくるシーンがどれも大好きになった。

ビストロのシーンになると
「やったれ!」みたいな気持ちになる。

そして真彩さんはエリックと向かい合って歌う時に
本当に温かい眼差しを向けていて
エリックがお母さんを思い出すのも納得してしまう。


びっくり箱を落とした時に
「落としちゃってごめんね」と言いながら
愛おしそうに撫でているのも尊すぎる。

そしてレッスンシーン!
前回のクリスティーヌは前を向いて
自分の未来に向かって歌っているようだったけど
今回はずっとエリックを見つめていて
二人の関係性がとても深まっていく感じが良かった。

しかも二人とも微笑んだり照れたりする
タイミングが重なるので
なんだか見ていて幸せな気持ちになる。

だからこそ本番前のシーンで
1本だけ置かれた薔薇を愛おしそうに
抱きしめるクリスティーヌを見ていると
これがエリックからだと
気付いてくれたんじゃないかなと思える。

これまでKK目当てに舞台を見に行って
ヒロインが可愛いなとか、歌が上手いなとか
思ったことは幾度となくあるけど

こんなにもずっと見ていたいと思った
ヒロインは初めてだった。



そして前回インパクトが最強だったカルロッタ。

前回のエリアンナさんの歌は、圧が強くて
高音から低音までとんでもない声量と
歌の上手さでボコボコにする感じがとても良く
客席までヒリヒリする怖さが届いてきた。

そのヒリヒリを受けながら後ろから登場する
オーケストラの皆様の迫力がまた良かった。


今回は、石田ニコルさんと皆本麻帆さん。

石田ニコルさんはセリフのテンポが良くて
客席を笑わせる力がすごかった。


皆本さんは優雅で落ち着きがあり
じわりとする笑いと、歌の迫力が強い。


前回と少し歌の歌詞が変わっていたのも
お二人に寄せて手直しがあったのかな。


カルロッタがずっと夢見てきたオペラ座の舞台。

彼女は子どもの頃からオペラ座に通う家柄の人だったのか、それともいつか入ってみたい、のし上がってみたいと思って外から見ていたのかどっちなんだろう。
私は勝手に前者かなと思っている。


そして今回は前回よりもカルロッタとショレ夫婦の
仲の良さが強く出ているのが良かった。

前回同様ショレがいない場面でもカルロッタは
「全て私のものになる」ではなく
「全て私と主人のものになる」と言うのもだけど

二人でキャピキャピするシーンが多いのと
前回のカルロッタは若干ショレをあしらう時があったけど今回はあんまりなかったような気がする。

ショレはただただ妻が立ちたがっているオペラ座に
なんとかして立たせてあげたくてやってるだけで
誰かを故意に傷つけようとはしてなかった。
彼は根本的には普通の優しさを持った人なのでは?

しかし前回なかったショレの悲しむシーンは
正直必要だったんだろうか?
ここからハラハラするシーンが始まるので
オーケストラもテンポアップしていくのに
あの場面で一度音が途切れてしまうのは
テンポが落ちてしまわないか?と思ってしまった。



そして今回のアンサンブル。


地下に住む住人達!

双眼鏡で一人ずつのフォルムをよく眺めてた


陰ながらエリックを応援していたら
彼が傷付いた時に心配して寄って行ったりと
エリックが彼等になんだかんだ
愛されている気がして嬉しかった。


オペラの季節が始まる歌を歌う時に
演者役とお客さん役が
前回は一列で歌って踊っていたのが
今回は前後にも広がって全体に散らばり
迫力が増してるのがめちゃくちゃ好き。


そして演者役の男性、轟さんが中性的なキャラで
女性が自分の立ち位置にいると
おしりでポンっと押しのけて
「私の前に立たないでよね!」みたいにしていたり

洗濯のシーンでもクリスティーヌに
「新人さん?頑張ってね」や「素敵な笑顔ね」と
微笑みかけていたのも性格が表れてて良かった。

ゲラールが解任される時も、他の演者が怒る中、
その人は受け入れようとしながら
荒田さんが演じるおどけがちな演者役の人に
諭しているところもあり
全員が全員同じ感情になってないのが多く見えた。
前回よりも一人ひとりの個性が強くて
人間味があっていいな。


そして冒頭にシャンドンの取り巻きとして
出てくる女性の一人、木村つかささんが
めちゃくちゃ鼻筋が綺麗でお顔が麗しすぎて
アンサンブルが出てくるたびに探してしまった。
お顔がとても好き。


真夏の夜の夢に出てくる妖精の王オベロンは
歌がうますぎて「誰が歌ってるんだ!?」と
ずっと気になってしまうほどだった。岡さんかな。


それとジャン・クロードは
前回女性だったけど、今回は男性になってた!
2008年、2010年、2014年版のキャストは
全て男性だったから、元は男性のキャラなのかも。

2019年の佐藤玲さんの時は凛としたさっぱり系で
今回の中村翼さんはほんわか優しい系で
どちらもとても良い。
今回はチェックの衣装も可愛い!
城田シャンドンとちょっと仲良しな感じがまた可愛い。


そして前回は絵だった背景が
今回はスクリーンになって映像が流れていて
同じシーンでも前回と違って見えるのも良かった。
絵の方が高級感があることもあるけど
映像だと臨場感があるのが良い。



そして!僕らの最推し!KK!加藤和樹!
前回はストレートめだった髪が
今回はカールがかかっている。可愛い。

顔が良い。



彼が演じるファントム(本名エリック)は
顔の醜さ故に小さい頃から地下墓地に暮らしている。


加藤エリックは、見た目は大人、中身は子ども。

地下に住んでいても
服はとても上品で、
ブローチやフリルのついたシャツ、
刺繍の入ったジャケットなど
ゲラールからの愛情を感じられる。
ゴージャスなベッドもそうなのかな。


自分の好きなことや嬉しいことは超高速早口で語り
嫌なことがあると突然感情が爆発する。


そしてゲラール(オペラ座の前の支配人で
実はエリックの父親)以外と話したことがない。


だからクリスティーヌに出会って歌声に感激し、
勇気を出して頑張って話しかけるが
自分の感動を超高速で伝える。

言葉のキャッチボールというよりは
一方的に豪速球を投げるように喋る。


クリスティーヌと地下を巡る時も
エリックは緊張と興奮が止まらないので
ずっと肩が上がっている。可愛い。


そしてひたすらにここの良さを超高速で説明する。
頑張ってクリスティーヌと腕を組むのに
何かを見つけるとすぐ走って行ってしまい
クリスティーヌを置いて行ってしまうのも
あまりにも少年っぽすぎる。可愛い。


それなのに階段があると手を差し伸べたり
クリスティーヌのことを魔法だと言ったり
好きな詩集を紹介したりと
突然始まるジェントルがまた歪さを高める(褒めてる)


ちなみに彼が紹介する詩は
ウィリアム・ブレイクの詩集
「無垢と経験の歌」にある
「小さな黒人の子ども」という詩 。
その後の歌にも詩が引用されている。

※青空文庫より

そんな詩を自分に重ねていたエリック。
クリスティーヌを守ってあげなくてはと
思っているのも似ている。

冒頭で仲間の子羊達はどこにいるんだろうと
嘆くシーンがあるけど
それもこの詩の引用なんだろうな。

ただ、「僕は闇にしか住めない」などと
そんな絶妙に気まずい詩を読まされて
クリスティーヌがどう思うかということは
人と関わってこなかったエリックには想像できない。


そんな彼だけど、ずっとオペラ座で暮らしてきて
様々なオペラを見てきたであろう。

今回のファントムの中に出てくるだけでも

敵国の戦士と恋に落ちる王女の話「アイーダ」

高級娼婦と青年貴族が恋をする「椿姫」

兵士が気ままなジプシーと恋をする「カルメン 」

妖精の悪戯で、恋人以外の人を
好きにさせられてしまう「真夏の夜の夢」


たくさんの喜劇や悲劇がオペラ座で演じられてきた。

だからこそエリックは
歌は愛のために歌い、
願いを叶えるために歌うのではないという。

そんな愛を語るこれまでの沢山の演目を
エリックはどんな気持ちで見ていたんだろう。

いつか自分にもこんなことが起こるのかなと
微かな期待を抱いていたのかもしれない。


でも自分はこの容姿だから無理だ。

何のために自分は生まれてきたのだろうか。

生きる意味が分からない彼に
突然現れた天使の歌声のクリスティーヌ。


彼女の歌を上達させたい。

オペラ座の舞台に立たせてあげたい。


その気持ちが声や表情だけでなく
マスク越しの視線からすら伝わってくる。


二人が出会った時の歌で

「この舞台で いつか 君が 歌えたなら」

という歌詞があるけど
その「君が」のところだけ
とても力がこもっている。

想いが爆発しているようで
固く決心しているようにも思える。


エリックは基本コミュ障だから
クリスティーヌと目を合わせて話すのも苦手なのに

一緒にレッスンで歌うとなると
真っ直ぐに彼女を見つめて全力で歌い、
終わった途端に「はっ」と下を向いたり
ピアノから離した手の置き場に困っているのが可愛い。


そして仮面を見せてほしいと歌われた時、

彼女の望みは叶えたいけど
自分の顔を見せたら嫌われてしまう

その葛藤に苦しむ姿が辛すぎて辛すぎて…


彼女が歌いながら近寄ってくるのを見て、
困って泣きながら逃げ惑うエリック。

今回はたまにクリスティーヌの手を
強めに跳ね除けてしまう時があり、
一度、ぺちっと音がした日があった。

彼女にひどいことをしてしまったと
泣きながら自分の手をベシベシと叩いていて
何も悪くないんだよとひたすら泣いてしまった。


そして彼女に顔を見せて
腰を抜かされた時に
顔を見た衝撃だと分からずに
助けようと手を伸ばして
また拒否されるシーンが
何回見ても本当に辛い。


彼女が走り去っていってから
なぜ彼女が腰を抜かしたのかに気付く姿…

一度、マスクをつけてから
「この顔め!」とでも言うように
顔を叩いていた日があって
苦しすぎて死ぬかと思った。


そして今回は、同じ歌でも
前回よりも低く歌っていて

おどおどしている可愛さから
突然かっこいい低音先生になるギャップにしぬ。


そんなエリックのセリフで一番好きなのが

クリスティーヌの素晴らしさを伝える時の

「神々は貴方を想って微笑んだんだね」



こんな愛の詰まった言葉は聞いたことがない。

エリックは事実を伝えようとしているけど

側から見たら壮大な告白ではないか。


だからこそなんとかして
クリスティーヌには仮面を外しても
受け入れてほしかった。仕方ないけど。でも。


パンフレットで真彩さんが
そのことについて書いてくれてて
少し救われた気持ちになった。



でも今回演出が変わって、
最後にクリスティーヌが
撃たれて死にかけているエリックの
仮面を外そうとするけど
エリックは拒んでしまう。
仮面をつけたまま死なせてくれ、と。

クリスティーヌはそれを尊重して
彼が息を引き取ってから仮面を外す。


これだけは本当にちょっと、なんで、って…


前回は死にかけてる時に
クリスティーヌに仮面を外されて
そのままその顔も愛おしそうに撫でてもらいながら
エリックは息を引き取っていた。


一度は顔を見られて拒絶されたけど
最後にその顔も受け止めてもらい
綺麗な歌声に包まれて守られる。

ようやくエリックが救われるシーンだった。


今回死ぬまでに救われた感じがしなくて
どうしてこうなのだろうかと
ずっと悶々としてしまった。



それでも前回よりもずっと
一人ひとりの個性が強くて

クリスティーヌがエリックのことを
とても大切に想っているのが
伝わってくることがとても多くて

悲しいけど何回も見たくなった。


そういえば前回はカーテンコールの時に
エリックはもう魂が抜けているかのように
どっぷりと疲労感が強かったけど

今回になってクリスティーヌと二人で登場になると
コミュ障キャラ炸裂に戻っててとても可愛い。


この前のトークショーで
演出のしろたんに再演始まってみて
どうだったかと聞かれてKKが
「めっちゃ楽しい!!」と答えたら
「よく楽しめるね!俺ボロボロだよ!」
と言われたらしいけど、本当にそれはそう。
見てる方も毎回目が腫れるほど泣いてボロボロよ。


どこか別の世界線では
エリックがクリスティーヌや
パパ、ママ、劇団員と幸せに暮らせたらいいな。


エリック生まれてきてくれてありがとう。















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