おしゃれな姿
おしゃれの評価は簡単になった。その服装の時に人から見られた回数を数えればいいのだ。
昔はモデルの人がすすめているものがおしゃれとされていたり、もっとひどいとアパレルメーカーが流行を操作しようとしていたらしい。
それがかわいかったり、カッコよかったりすることは否定しないけど。でもおしゃれっていうのはその人に似合っているかどうかでしょ。
ちんちくりんな体型の私にビシッと決まったスーツルックはどう考えても似合わないし、40代のおばさんが私たち女子高生みたいなミニスカートを履いていたら勘弁してよってなるでしょ。
今ではみんなが身につけているあの小さな機械が、その人の視線を記録している。あれのカメラはGPS機能がついてるだけじゃない。カメラがどっちの方向を向いているかも記録してるんだって。
だからその指し示された場所に人がいれば、その人の機械が「あなた、今見られてますよ」って教えてくれる仕組み。
嫌だったら通知をオフにすればいいんだけど、オフにしたって見られてることは変わらないんだから前向きに考えなくちゃね。
私の場合は、そう、おしゃれ評価に使ってる。
彼氏もそうなんだけど男の人って、かわいい子とかキレイなお姉さんがいたらすぐその人を見ちゃうでしょ。そっから思いついたんだ。
服装、お化粧、髪型。組み合わせ次第でいくらでもバリエはあるけどどれがベストかなんて難しい。友達にどれがいいか聞いても知り合い同士の馴れ合いになっちゃうし。
タンスひっくり返して悩んでるより、実際にその格好で外に出てみればいい。
それで見られた回数を比べてみて一番よく見られたやつが、一番私に似合ってるってこと。
ダサいからウォッチ対象として見られてるんじゃないかって? 言ったでしょ。視線がわかるって。好意の目で見てくれる人はじーっと長く見るし、ダサい場合は一回目をそらされるんだよね。見ちゃいけないものを見た? って考えるのかな。だから二度見になるの。
新しい服を買った翌日はそれを着て学校に行くのが楽しみ。毎日同じ制服なんて耐えられないし、ちょっと遠いけどこの私服通学の高校選んで正解だったな。
※
「おっはよー! 聞いてよ。今日の私、自己ベスト更新」
「今日も視線数えながら来たの?」
「もちろん。もう歩いてるだけでどんどん見られちゃって。今日のこの格好の何がよかったのかなあ。シャツかな、スカートかな。あ、昨日髪も少し切ったしそれかな」
「別に普段とあんま変わらないと思うけどね。あ……」
「週末のデートもこの格好でいこうっと。視線の数は嘘をつかない。これが私に一番似合ってるんだ」
「それはやめた方がいいよ」
「あのさ、彼氏いないからってひがまないでくれる?」
「だって……。スカートのチャック空いてるよ」
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