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忘れられないの

小学生の頃のお話

冬は日が落ちるのが早いから、習い事のダンスから帰る頃には辺りが真っ暗だった。

街灯もなく誰もいない道を自転車のライトだけを頼りに走る。
「あそこの振りは体をもうちょっと外に向けたほうが良かったかな」
頭の中で今日のダンスを振り返る。
上手くいかなかったところばかりが浮かんできて、少し気が落ちる。

ふと空を見ると、真っ暗な空に星が散らばっていた。
それを見た瞬間、頭の中で考えていたことが全部すっ飛んだ。


「わぁ…」

あまりの綺麗さに感動して、思わず声が出た。
背中をぐっとそらすと、さらに大きな星空が広がっていた。すごい。どこを見てもきらきらしている。

あの星が1番光ってるからあれは一等星だな!
あ!あの3つを繋げると三角になる!
冬の大三角形だ!!
頭の中はもう星のことでいっぱい。
自転車のスピードを極限まで落として空を眺める。
本当に空一面に星が散らばっている。
不思議な気持ちになった。
プラネタリウムを初めて見た時の気持ちと同じだ。
自分が浮かんでいるような、飛んでいるような、そんな気持ちになった。

目線を前に戻し、自転車のスピードを上げる。
さっきまでの気の落ちようは何だったのか、心が軽い。風が心地よい。虫の声も聞こえてくる。

早く帰ってお母さんにこの空のことを話したい!
そう思って颯爽と自転車を漕いだ。


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