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お焼香の日

  先生の訃報が届いた日はうす暗い雨の日だった。 しかし お焼香に行った日は よく晴れて 青空が見えていた。 相談していた通り 実家に 2歳の娘を預け 喪服に着替え 迎えに来てくれた友人の車に乗り 葬儀場に向かった。
  

 葬儀場は閑散としていた。 1階の受付で 強化の 供花代の支払いを済ませ 2階の会場に向かう。 少し緊張していた。 しっかりしないといけないとも思っていた。 ご遺族にも友人にも 気を使わせたくなかった。 受付には 先生の旦那様と ご子息ご一家がいらっしゃった。 久々に お会いした お孫さん方は 立派に成長していらっしゃった。 ご遺族は穏やかに 顔を 見てやってと声をかけてくださった。 祭壇は たくさんの花に囲まれていた。 私と友人からの供花も並んでいた。 正面に立つと 穏やかに微笑む 先生の遺影があった。 十数年前の物だと言う。  病気が発覚する前の 先生と ほとんど 代わりのない姿だった。


 棺の上には、巻きの小さい上品な 赤いバラの花束が 置いてあった。 きっと旦那様だろうと思った。 先生は 旦那様のことを半分ふざけてダーリンと呼ぶことあるくらい仲が良かった。理想的な夫婦だった。
 

 お焼香をして 友人と共に 棺のそばにより 先生のお顔を見せていただいた。 最後に会った 最後にお会いした 時よりも さらに痩せ 顔色も 色白だった顔色は浅黒くなっていた。 友人は泣いていた。 私は 泣けなかった。 何と言えばいいかわからない、胸のつまりだけが重たかった。 「先生すごく頑張ってくれてたんだね」 と 何度も つぶやいた。 名残惜しくてその場を離れがたかったが、他の参列者の方もいらっしゃったので 静かに先生のそばを離れた。

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