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中東最大の窒素肥料メーカーが描く脱炭素戦略:Fertiglobeの挑戦


日本国内でも脱炭素化に向けた取り組みが加速する中、注目すべき企業が中東にあります。Fertiglobeは、世界最大の尿素とアンモニアの海上輸出業者であり、特に脱炭素アンモニアの分野で先駆的な役割を果たしています。最近の業績発表からも、同社の脱炭素への真剣な取り組みと、持続可能な未来に向けた具体的な計画が浮き彫りになっています。

持続可能なアンモニアの未来

Fertiglobeは、低炭素アンモニアの製造において世界初となる大規模な商業出荷を実現しました。このプロジェクトは、同社のアブダビ施設で生産され、ADNOC(アブダビ国営石油会社)が23億ドルを脱炭素化と低炭素ソリューションに投資したことで実現しました。最初の低炭素アンモニア出荷は、三井物産株式会社によって日本に輸送され、クリーンエネルギー発電に使用される予定です。このような国際的な連携は、脱炭素社会の実現に向けた一つの大きなステップであり、日本の企業にとっても参考となる成功事例です。

画期的なH2Globalオークションでの勝利

さらに、Fertiglobeは、H2Globalオークションでの成功により、エジプトで再生可能アンモニアを製造し、ヨーロッパに供給する契約を獲得しました。この契約は、2033年までの長期にわたり、最大3億9700万ユーロ規模で締結されており、1トンあたり1000ユーロの価格で供給される予定です。この取り組みは、エジプトのグリーン水素プラントの最終投資決定(FID)に向けたフレームワークを提供し、アフリカ初の統合型グリーン水素プラントの実現に寄与することになります。日本企業にとっても、グリーンアンモニアや水素の供給契約が今後のビジネスチャンスとして注目されるでしょう。

エネルギー効率の向上とAI統合

Fertiglobeは、エネルギー効率の向上を目的とした「製造改善計画(MIP)」を推進しており、2025年末までに1億ドルのEBITDA(利息・税金・償却前利益)増加を目指しています。この計画の一環として、AI(人工知能)の統合も進めており、生産、保守、持続可能性の分野での効率化を図っています。日本企業がこれらの技術を取り入れることで、自社の脱炭素化と生産性向上に寄与する可能性があります。

ADNOCとの戦略的パートナーシップ

Fertiglobeの親会社であるOCI Globalの50%の株式をADNOCが買収する予定であり、この取引が完了すれば、FertiglobeはADNOCの強力な支援を受けつつ、世界的な低炭素水素とアンモニアのバリューチェーンをさらに発展させることが期待されています。これにより、日本のビジネス界でも、脱炭素に向けたパートナーシップの重要性が再認識されるでしょう。

Fertiglobeの取り組みは、単なる環境対策にとどまらず、持続可能な未来を見据えたビジネス戦略の一環として位置づけられています。日本企業がこのようなグローバルな潮流をどう捉え、どのようにビジネスチャンスに変えていくかが、今後の成長において重要な鍵となるでしょう。

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