食うために働き働くために食う

日々の仕事の中で一番大切な仕事とはなんだろうか。
ランチである。
ランチをする休憩時間60分に給料は発生してないし、労基法でもざっくり言えば「完全に仕事から離れて何やってもいい時間」なので「それは仕事ではないのでは?」と思われてしまうのも無理はないのだが、あと別に思われてしまってもいいし反論する術もないのだが、当人は真剣に仕事の要だと根拠なく確信しているので優しい目で見て欲しい。

私の午前中の仕事は一番大事な仕事の準備をすることだ。つまり、ランチの準備だ。ランチの時間が割と自由な職場なので、午前中の仕事の段取りはランチのピークタイムの客が居なくなり、かつまだランチタイム営業は確実にしている12:45にキリがよくなるように行う。この段取りにランチが大事なのだ。人間は低きに流れるもの。段取りなどなくてもダラダラやっていれば仕事はそのうち終わりはする。ただ「絶対にランチで満足するぞ」という熱意があればランチの神タイムである12:45のためにしっかり段取れるというもの。自然と仕事の効率はアップする。

そして午後の仕事にもランチの効能は絶大…といいたいところだがちょっと違って、失敗したときの精神的ダメージが甚大で午後の仕事のモチベーションに関わる。ランチは午後の仕事を穏やかに冷静に行うための大事な儀式でもあるのだ。

失敗したくないだけなら牛丼チェーンや立ち食いそばに行っていればよいし、すでにいくつか安くて美味しい定食を出す店も見つけているのでそういところに行けばよいのだが、どうしても冒険したくなるもの。新規開拓も大事だ。美味しいものはいっぱい知っている方がいいから。

そして昨日失敗したのだ。
その日は絶対にフライ的な物が食べたかった。美味しいアジフライ定食の店は知っていたのだがその日はアジフライという気持ちになれずちょっと街中を探したのだ。
見つけたのはレトロな感じの喫茶店なのかレストランなのかといった風情の店で「シーフードミックスフライ定食」と外のメニュー表に書いてあったので入った。
入った瞬間「こちらへどうぞ」と言われそこに座る前にピクルスと平皿に載ったご飯が出された。まだ何も頼んでいないのに。ピクルスはいいんだけどご飯早すぎだなと思った。冷めるだろ。
シーフードミックスフライ定食を頼んだところ、店員のおじさんが「シーフードある〜〜?!?!」と厨房に向かって叫んだ。他の客(常連っぽい)は基本的に日替わり定食しか頼まないようだった。もうかなり嫌な予感はしてた。
結局シーフードミックスフライは有り、ちょうど揚げ物が揚がるくらいの時間で出てきた。イカフライ2個、エビフライ1個、何故か丸い形の何らかの魚のフライ2個に乾いたナポリタンと冷めたジャガイモのフライがついてきた。乾いてたり冷めてたりするくらいなら載ってないほうがいいんじゃないかと思った。
あとフライはなぜか全部水っぽかったしタルタルのていでたっぷり載っているソースはなんか薄いマヨネーズだった。最初に出されたピクルスだけが野菜の味が引き立ってちょうどいい酸味でうまかったが、どうせなら弁解の余地もないほど全部だめであって欲しかった。申し訳程度にはうまいのかよ。
頼んだ食事を残す事は普段はしないのだが全く食は進まず、ささやかな抗議の気持ちで乾いたナポリタンは残した。

そういう日の午後の仕事はどうだろう。私も大人なのでそんな事で不機嫌な顔で仕事したりしないし仕事が手につかないということもないのだが、内心は金を払って罰を受けた後のような気持ちで仕事をしていた。
ランチ一つで人をここまで傷つけることができるとはアンタ天才だよ、マスター。ナメた仕事しやがって。という気持ちで午後は仕事をしていたのだが、なぜか普段より捗ってしまい妙に悔しかった。
ランチは美味しくても美味しくなくても仕事の要なんだなとしみじみ思ったのだった。

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