見出し画像

黒蝶奇譚~夢と現実の狭間にての再会~(完結)

解説

*『ぼくらのわくわく大学園祭』(わく学祭)に参加していた時に作成していたペーパー『黒蝶奇譚』に載せていたプライベート・テイル(小説『夢現の物語 織宿の観察日記』と題して連載。ただし内容は毎回バラバラ)より抜粋したものです。

収録先


本編

『黒蝶奇譚~夢と現実の狭間にての再会~』

作/新名在理可

「俺の名は、織宿(おりおる)。意識と無意識の狭間に住まう者だ」
 そう名乗ったのは、一冊の黒い表紙の本だった。それが空中に浮かんでいた。

 ここは森の中に開けた大きな泉のほとりで、近くには古ぼけた小さな社(やしろ)がひっそりと建っている。空は曇っているわけでもなく昼のはずだが、どことなく薄暗い。

「君はここ……異世界アラヤシキに来て、自分の名前を名乗ることができるか?」
 黒い本──織宿が尋ねた相手は、相対してたたずむ和服姿の一人の少年だった。少年は、12、3歳の、ちょうど中学に上がったばかりの年頃に見える。彼は、苦笑して答えた。
「今さら、ぼくの名前を言うの? っていうか、訊くかなぁ? ……まぁ、いいですよ。
 ぼくの名前は、三枝生 七偲(さえき しちし)だよ、織宿。いや、『夢現の物語 織宿(むげんのものがたり おりおる)』の名前のほうがしっくりするかな? 一応、本の姿をとっているわけだしね」
 それを聞いた織宿は、「そうか(……自分が何者であるか、忘れずにいることは大切だな)」と言った。

「それで?」
「……では七偲、俺はこれから、おまえのアートということになるな。……よろしく」
「ずいぶん、唐突だねぇ。まぁ、いいですけどね。じゃあ、『りおさん』、こちらこそ、よろしく」(←いきなり、愛称で呼んでるよ、この人。(汗))

 それが、以前から互いに夢に見ていた七偲とそのアート夢現の物語 織宿との、マスターとアートとしての『再会』だった。

(了)

登場人物紹介


☆主な登場人物☆
†三枝生 七偲(さえき しちし)……わく学祭参加PC/真名:黒仁蘭/男/23歳/大学院修士課程に在籍/アート使いで、アート・夢現の物語 織宿のマスター/印象:美形な風流人・道楽者/「この世界は物語、浪漫で成り立っている」異世界、アラヤシキの生まれで日本育ち/神社な養家では末っ子長男で三枝生流弓術の師範だが、小説家が本業。……だとか。

†夢現の物語 織宿(むげんのものがたり おりおる)……七偲のアート/モノス(物型)/(通常、)黒い表紙の四六判サイズの本の姿で空中に浮かんでいる/先端にそれぞれ黒い蝶型の紙片が結びつけられた、三本の紐の栞(しおり)付き/基本、無口だが、しゃべる時はキッパリ命令口調で、七偲はこれに弱いとか。

(以上)

あとがき


 読んで頂きまして、ありがとうございます。

 実は、この作品は、同じブック内にある『黒蝶奇譚~夢見月に見る夢は……~』(小説家なPCの三枝生七偲が書いた作品との設定)と、話がリンクしてたりします。

(新名在理可)

■■


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?