最短距離に憧れて

私は方向音痴だ。それも極度の。

例えば、デパートに入ったとする。入ったときと出たときの出入り口が違っていたら、もうどっちに行けばいいのかわからない。

この前は、喫茶店でトイレから出て会計をしに行きたかったのに、逆方向の店の奥へずんずん歩いて行ってしまい、自分でもびっくりした。

友だちとの待ち合わせの場所にも、たいてい最短距離で行けない。Googleマップを使えばいいのに、なぜか自力で行こうとして歩行距離を増やしている。道を歩いていて間違いに気が付き、急にUターンして、後ろを歩いている人に驚かれる。

スマホなどない時代の待ち合わせは、

○○駅の北口の改札出たところに１０時ね

と、たいてい駅または、駅近くのわかりやすい場所だった。そのほうが良かった。最近はお店に直接集合で、LINEにお店のURLが貼られている場合が多い。こういった連絡が来ると緊張が走る。

私の方向音痴っぷりを知っている友人は、駅で待ち合わせてから行こうか？とやさしい気遣いをしてくれる。すごくうれしい。駅で待ち合わせてお店まで連れて行ってもらう。当然、道を覚えていない。

だから、もう一度そのお店に行きたいと思っても一人で行くときは、やはり最短距離では行けない。

夫も息子たちも素晴らしく方向感覚が良い。だから、家族で外食をして飲めない私が帰りの車の運転を担当すると、驚きの声が車内であがる。

えー、母さん、なんでここで曲がる？次の道で曲がったほうが良くない？

えー、ここじゃない？早く言って～～。どうすればいい？このまま、まっすぐ行っていい？

毎回、酔いが醒めるのが早まるとまで言われる。

方向や道が覚えられる人になりたい。最短距離で移動できる人になりたい。
バッグから、スマホと眼鏡を出さなくても、さくさく目的地に行ける人になりたい。最短距離で行けたら、どんなに気分がいいだろう。