DAMN YANKEES『High Enough』

ミュージックビデオ、あるいはプロモーションビデオ、というのがある。曲についてる映像である。多くはそれを歌っているバンドが演奏している風景、ライヴ映像だったりを編集していたりする。これはこれで、どんなアーティストが歌ってるんだろう、というのが分かるし、場合によっては歌っている姿がかっこよくて更に好きになった、ということもあるだろう。

他には、ストーリー仕立てにしているものもある。バンドのメンバーが演じている場合もあれば、俳優さんを起用する場合もある。

わたしはこの、ストーリー仕立てのMVの内容を考察するのが好きである。

歌詞にそった内容にしているものもあれば、歌詞全く関係ない内容になっているものもある。どちらにせよ、そのバンドがそれを良しとして作って世に流しているもののはずだ。

まるで1本の映画を見ているような出来のMVもある。個人的に、大好きなのがDAMN YANKEESの『High Enough』のMVだ。

DAMN YANKEESは元ナイトレンジャーのジャック・ブレイズ、スティクスのトミー・ショウ、そしてテッド・ニュージェントらによって結成されたバンドで当時話題になった。当時といってももう30年くらい前の話だ。

ナイトレンジャーが解散してしまって悲しみに暮れていたわたしにとって、ジャックがこのような形で新バンドで登場したことは嬉しかった。

この『High Enough』はビルボードでも3位くらいまで上昇したヒット曲で、日本でもCMなどで流れていたように思う。

1人の男がとある建物に立てこもり、警官が銃を持って包囲するシーンから始まる。

メンバーが歌ったり演奏したりするシーンを挟みながら、モノクロ映像によってその男が一体何者なのかが描かれていく。美人の彼女が登場、どうやら2人は金を奪って逃げている生活をしているようだ。

映像からは、2人はそれでもとても愛し合っているようなのが伝わる。全うに仕事してちゃんとすればいいのに、とも思うし、それを彼女に強要してるならこの男は駄目男である、とも。それでも恋は盲目なのか。

ところどころ挟まるメンバーのシーンが好きだ。ガムくっちゃくっちゃしながらギター弾くテッドは面白すぎるしインパクトがでかすぎる。

当然ながらそんな暮らしは長くは続かず、警察に追いつかれてしまうことになる。2人は手をとって逃げ出すが彼氏のほうが柵を越える間に彼女が捕まってしまう。なのにあろうことか彼氏は彼女を置いてそのまま逃走していくのだ。やっぱりクズ男だ。あんたこんな男好きだったの、いや別れて正解だったよ。(ドア蹴り飛ばして入ってきてドヤ顔でギター弾くテッド氏は最高)

彼女は捕まり、牢屋へ。そして彼氏は、というと冒頭の立てこもりのシーンに繋がるのだ。

こんだけ派手にぶっ放してるんだからまあ多分彼氏は無事では済んでないだろうと思う。そもそも武器も持ってなさそうなの分かるんだしこんなに撃たなくても。

そして彼女は手錠をかけられ、どこかへ連行されていく。後ろにいる神父さん…ガムくちゃくちゃしてる…あっ!テッドwとなるオチが最高である。

盗みをはたらいていた若い男女が逃走の末、彼女は捕まり、彼氏は抵抗したから銃撃されて死ぬ、というストーリーだが、これ、膨らませようと思えば膨らませて1本の映画にできそうだなあと思う。

彼女はとても、こんな暮らしを自らしたいと願うような女性にも見えない。この彼氏に出会って運命を変えられたクチなんでは、と思う。出会いから恋、そしてなんでこんな生活しなきゃならないかなどを膨らませる。

男の方が、「金がたまったらデカいことしようぜ これは俺たちの夢のためなんだ」とか言ったかもしれない(言いたい放題である)。

ちなみに『High Enough』の歌詞の内容はほとんど関係ない映像内容だ。別れを切り出された方が「さよならなんて言わないで」と言う歌だ。

強いて言うなら、「Yesterday's just a memory(昨日はただの思い出)」の部分だろうか、彼女が牢屋でこれまでの日々を回想する、ということなら当てはまらないでもない。

いや~、いい曲は年月たっても変わらないものですね。


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